第41話

ある日体調を崩した私は、会社を早退することになった


家に帰ると玄関に誠二の靴があった


それと、私のものではないパンプスも


その靴を見た瞬間、想像はついた


浮気だ


しかも私の家で


しばらくどうしていいものかわからず、玄関に立ち尽くすと、中にいる2人の会話が耳に入ってきた


「ねぇ誠二。友梨先輩まだ気づいてないの?」


うわ…浮気相手も後輩とか

私情けない


「気づいてない気づいてない」


今気づいたよ

いつから浮気してたの


「ウケる。誠二が本気で自分のこと好きだと思ってんの?」


…ん?


「思ってるんじゃない?俺からしたらただ美人ってだけだけど」


どういう意味?


「友梨先輩落として勝った金額いくらだっけ?」


勝った金額?


「軽く20万くらい?難攻不落の城敗れたり~」


「キャハハ!自分が賭け事に使われてるのも気付かないなんて哀れだねぇ。美人過ぎるのも可哀想。いい気味だけど」


「あの一ノ瀬友梨を落としたってステータスが欲しかったんだよなぁ。次はあの一ノ瀬友梨を振ったっていうステータスかな」


涙も出てこなかった

心の底から自分が情けなかった

私は誠二にとったらただのギャンブルの駒

誠二が必要としていたのは私じゃない

誠二が好きだったのは私じゃない


私を手に入れたという事実


ただそれだけ


今までの言葉も、仕草も、笑顔も

何もかもが偽り


私は観戦客に囲まれて知り得ない賭け事に踊らされていただけ


『さようなら。誠二』


「ゆ、友梨先輩!あの、」


『出て行って』


「友梨…」


『楽しかった?ゲームはおしまい。出て行って!』


こんな失恋の仕方をするなんて思ってなかった


ただの浮気ならどれだけ良かったか


何を信じていいのか、本気で私を必要としてくれる人はいるのか、わからなくなってしまった


それから私は恋愛することを恐れてしまった


これが私と誠二の偽りの恋愛だった

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