第38話

「久しぶり、友梨。と、えーと…真希ちゃんだよね?」


「どーも」


二度と会うことはないと思っていた


いや

二度と会いたくないと思っていた


「何年ぶりかな?友梨また綺麗になったね」


『そうですか』


私は目も合わせずに棒読みで返事をした


「冷たいな。まだ怒ってるの?」


『別に』


「友梨、そろそろ出ようか」


『うん』


真希が私のために気を利かせてくれた


食べ途中のケーキを私達は口に頬張る


席を立って歩き始めると、誠二は薄っぺらい笑顔と共に後を追ってきた


「そんな避けなくたっていいじゃんか」


『私に話しかけないで』


「あの、誠二くん」


真希の顔は怒りを隠せていなかった


「何?」


それにも関わらず、絶えず笑顔を向けるこの人の神経が知れない


「あなたどの面下げて友梨に声かけてるの?あんな酷いことしておいて」


「…そんな酷いことしたかな?」


「何言ってんの!?ムカツク!あんたねぇ…!」


『真希』


私は今にも誠二にビンタをしそうな真希を制止した


『誠二には二度と会いたくないと思ってたし、これからもその気持ちは変わらないと思う。だからもう関わらないで。行こ、真希』


「う、うん」


真希は言い足りなかったかもしれない

でも私は一刻も早く誠二から離れたかった


思い出したくもない


入社して間もない頃の私の失恋

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