第15話

「一ノ瀬」


『夏川先輩、おはようございます』


お気に入りのカフェモカを片手に出社すると、社内一のモテ男、夏川先輩に声をかけられた


「最近何か変わったな」


『え?そうですか?』


「何かいいことあった?」


『な、ないですよ』


「そうか?彼氏でもできたかなぁって思ったけど」


『ないです!』


「好きな人ができたのか」


『いないですよ!』


違う

好きとかじゃない

ただ男の人と毎日連絡取り合うなんて久しぶりだからだ

絶対そうだ!


「必死になるあたり。今まで仕事仕事だったんだから、いいんじゃないか?」


『そんなんじゃないですってば…』


「ちょっと悔しいけどな」


『え?』


「そういえば、来季のデザインさ…」


『あ、はい…』


ボソッと呟いた一言をなかったかのように仕事の話に戻される


入社したときから夏川先輩は頼りになって優しいし、仕事も出来る尊敬できる人だった


こんな人と付き合う人は幸せだろうと思ったこともある


でも、好きというより憧れだった


「で、いつ頃にはできそう?」


『今週中にはできると思います』


「さすが。一ノ瀬は仕事が早いな」


こんな人になりたい


そういう憧れを抱いていた

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