第10話

「だから連絡先教えて?」


私を好き?

LIKE?LOVE?

え?何言ってんの?


「聞いてる?」


私は自分の頬を強くつねった

痛い


「夢じゃないから。何してんの」


夢じゃない

これは現実?

だって私は普通の一般人

こんな有名人と2人でご飯を食べることすら不似合い


「教えてよ」


『嫌です』


「…理由は?」


『だって、私のこと騙す気ですよね?」


「騙してどうなるの?」


確かに

私なんか騙しても何の得にもならない


『からかって楽しんでますか?何かのゲームとか。あ、ドッキリの撮影とか』


「そんな悪趣味なことできると思う?」


確かに

そんなのに出たら人気がた落ち


「疑いすぎ」


『だってこんなのあり得ないですよ』


「でも現実俺は友梨に惹かれた」


サラッと言うな


「別に今すぐどうとか思ってない。芸能人だからこそ振られるかもしれないって気持ちもある。だからまずは友達から始めてほしい」


真剣な表情

本気…?


「久しぶりにあんなドギツイ風邪ひいて、タクシー捕まらないから電車乗ったら避けられて…でも友梨だけは違った。隣に座った時から心配してくれてたよな?」


『そりゃあ…あんなに苦しそうにしてたら…』


「俺の正体気付いてるのかと思ったけどそうじゃなかった。俺だけじゃなく、誰にでも優しい子なんだって今日確信した」


『た、ただのお節介です』


「あんな怪しい風貌の奴に優しくする度胸も気に入った。俺のためにタクシーの列に並んだ奴ひとりひとりに頭下げてる姿なんかたまらなかった」


恥ずかしくて段々顔が熱くなっていく


『あ!!』


「?」


『た、体調悪いんですか!?病気…』


さっきもう長くないって…


「あー、あれ嘘。ごめんな」


『嘘!?』


「ああでも言わないとついてきてくれないだろ?さすがに人混みで顔晒すわけにはいかないし」


だから人目を避けるところに連れて行きたかったんだ


「でも友梨は驚いても大声挙げないし、冷静なんだな。助かる」


ニッコリ笑う冬弥

この笑顔が今私だけのために向けられてるなんて知ったらファンに殺されるだろう


「だから友梨を騙す気もないし、からかってるつもりもない。俺は友梨を手に入れたい」


心臓がドクドクとしている

他の誰かに言われるのとは違う感覚が私を襲う


『でも、信じられません』 


「わかった。今は信じなくていい。友達になってくれる?キッパリ諦めるなんて言ったけど無理」


友達ならいいのかな

恋愛じゃないし、ただの友達だし…

でも芸能人って知って友達になるのって何かなぁ…

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