第9話

状況を理解できない

私の目の前にいるのはアーティストの冬弥

この人は風邪で苦しんでて…

お礼に今ご馳走になってる?


いや違う


連絡先を聞かれて断り続けて…


「大丈夫?」


『えーと…ちょっと状況を整理させてください』


「一緒に整理しようか」


『あ、はい。ぜひ』


「知っててくれたようだけど俺は冬弥」


『一ノ瀬…友梨です』


うわ…

なんだろうこの感じ


「俺は26。友梨は?」


『25…』


薄暗い照明のせい?


「俺はバンドマン。友梨は?」


『…デザイナー』


「へぇ…カッコイイ」


切れ長の瞳にまっすぐ見つめらると、吸い込まれそうになる


何この人…


「恋人いる?」


『いません』


「俺の怪しさはなくなった?」


『え?んー…それはまだ…』


「状況は簡単だろ?」


『いや、難題です』


「さっき言ったじゃん」


『?』


「好きになったって」


『…はい?』


「だから好きになった」


耳を疑う言葉が出てきた


私の耳には居酒屋特有のガヤガヤした音しか入ってこない


余裕の表情で微笑んでるこの人は何を言ってるの?


私をからかって楽しんでる?


冬弥が私を…好き?

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