第4話

『おはようこざいます』


「珍しい。友梨が遅刻なんて。どしたの?」


少しだけ遅刻気味だった私は小声でデスクについた


隣のデスクに座った同期で親友の真希が身を寄せてきた


『んー…ちょっとね』


「ふーん…男?」


『男なんかいないって』


「嘘。だって匂ってるよ?男物の香水」


『え?ホント?』


支えてて移っちゃったんだ

あの人の香水


「何何?どんなイケメンの誘いも断って仕事に没頭してきたモテ女は、どんな男捕まえたの?」


『真希~。そういう言い方はやめて』


「だって気になる。社内でも噂になってるよ?」


『ん?何が?』


「一ノ瀬友梨は本当は同性愛者なんじゃないかって」


『そうなの?』


「そりゃそうよ。社内一のモテ男、夏川先輩に始まり…ありとあらゆるモテ男振ってんだから」


『…別にアプローチもされてないし振ってもないよ』


「大体、いい加減男の匂いの1つや2つさせてくれないとあたしが困るのよ」


『何で真希が困るの』


「同性愛者の相手があたしだって言われてるからよ」


『…それもいいかも』


「え」


『なんて冗談。バカ言ってないで仕事仕事』 


「もー。モテ女は気楽でいいですねー」


一ノ瀬友梨

25歳

入社3年目のファッションデザイナー 


社会に出てからこれと言って恋愛することもなく、仕事に打ち込んできた


恋人はいらないわけじゃないけど、過去の苦い経験から、中々前に進めないでいる

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