第41話

暫く天音の寝顔をじっとり、俺の脳内に焼き付けるように眺めていた。


(俺だけの可愛い可愛い眠り姫)


二人だけの静かで幸せな空間に鳴り響く、バイブレーション音。


(誰だよ)


ローテーブルの上に置いてあった天音のスマホ。

それに表示される名前は、


❝明良❞ 


の文字。


(明良…?あぁ、あの邪魔者か。天音に電話してくんじゃねーよ)


勝手に人の電話に出るなんて真似はしねーが、正直、それをぶっ壊したい。そんな俺の気も知らないだろう相手からの、未だしつこく鳴り続けるそれを、睨み続ける俺。


(しつけーやつだな。出る訳ねぇだろ、さっさと諦めろよ)


あまりにも煩いから、憎きスマホを取るため、天音から離れそっと電源を落とした。


(俺たちの世界に邪魔者はお呼びじゃねーんだよ)


そうして、再び天音の横に並び、天音の香りが漂う中、腕の中に天音を閉じ込めながら静かに瞳を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る