遊雷

首を何度も引っこ抜いてかなりの量の血を抜いた。


「ひゅっ……けほっ…」


虫の息になったくらいでとりあえずやめて、髪の毛を掴んで五芒星へ戻る。

コイツが閻魔に証言すればりんをすぐにでも取り戻せる。


桜華が殺し回っていたであろう神の記録なんてこれでいらなくなった。

桜華と山神が共謀して僕の贄を殺そうとした、これだけで立派な断罪理由になる。


これでようやくりんに会える。

りんを取り戻したらすぐにどこかへ隠さないと。

みんな僕からりんを取り上げようとする。

そんなの許さない、りんは僕のものだ。


馬鹿を引き摺っていると、雷牙と贄がいるのに気が付いた。


「これさえ差し出せばりんは助かるよ。

早く閻魔のところに行こう?

りんが待ってる。」


早く行ってあげないと、りんは寂しがり屋だからね。


「あぁ。兄様、それがいるならもうあの男はいらないか?」


あの男って…あぁ、りんを苦無で殺そうとしたアイツね。

桜華を陥れるために一応調教はしたけど…


「もう要らないや、でもあれは殺さないよ。

百年は苦しませないとね。」


りんが苦しんだ以上に苦しめてやる。


「そうか。では、あの男の今後は兄様に任せる。俺は翠を拾って行くから先に閻魔様の元へ行っててくれ。」


もちろんそのつもりだよ。


「分かった、じゃあ後でねー。」


やっと…やっと会えるよ、りん。

本当に気が狂いそうだった、たった数日でも僕は耐えられない。

りんもそう思ってくれていたら嬉しいな。


山神を持って閻魔の屋敷へ行けば辺りが騒がしい。

僕が急に現れたのもあると思うけど…


「ら…雷神様!?」

「雷神様!」


何やら僕が来たら都合が悪いようにも見える。


「僕のりんは?」


近くにいた兵に聞いた。


「いや……あの……それが……」


何?その反応。


「ねぇ、僕のりんはどこにいるの?

早く言いなよ、殺すよ?」


今の僕には余裕がない。

りんと何日も会っていないから気が触れる寸前なんだ。


「そ……それが…あの娘は…その……」


胸の奥がざわざわとした。


「言え、りんはどこだ。僕のりんはどこにいるの?まさか怪我でもさせたの?

それとも誰かがりんをいじめてる?早く言え、早く!」


兵の胸ぐらを掴み上げて怒鳴ると、兵は泣きながら信じられない事を言い始めた。 


「それが……大怪我をしていて……目を覚ましません…」


は?何で?

なんで僕のりんが大怪我なんかしてるの?

何コイツ、本当に何言ってるの?


「りんはどこにいるの、早く僕を連れて行け。」


僕なら助けられる。

この化け物と等しい神力できっと治せる。


「そ…それだけはできませんっ…!!

罪人との面会はどのような方でもさせてはいけない掟なのです!!

掟を破れば私が殺されます!!」


何その掟。

僕には心底関係ないんだけど。


「僕はね、りんを取り上げられるあの日に、閻魔の式神にこう言ったんだ。

りんの様子が少しでも変わっていたら、閻魔の心臓をお前に食わせてやる、って。

この状況からして僕が閻魔を殺す事は確定したし抵抗したり言うこと聞かない奴はみんな殺す予定だけど、賢いお前はどちらにつく?

ちなみに、何があっても勝つのは僕だよ?

ほら、どうする?」


僕が聞くと兵は震えながら頷いた。


「あ……あなた様に従います。」


「よかった、思ったより馬鹿じゃないね。

早くりんのとこへ案内して?」


笑っては見せているけど、本当に怖かった。

りんはそれ程僕の全てなんだ。

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