翠
どっちの手も離したくなくて俺は必死に二人の手を握り返した。
「あ゛ぁぁぁあ!!!もう!!
何だよ!!クソ蜘蛛のくせによ!!!!」
握られた手からギチギチと音が聞こえる。
力が強いんだよ!!!
虫のくせによ!!!!!
「翠!!!俺の手を離せ!!!
りんを助けてくれ!!!」
「そんなの駄目!!!
白を助けて!!!」
二人とも、そんな俺のことなんぞお構いなしに手を握り返すのをやめた。
自分の命をなんだと思ってやがる。
ふざけんな!!!
「お前ら手を握り返せ!!!!
俺は絶対に離さないからな!!!
腕を千切られたって離さん!!!!」
あの邸で今までずっと一人だった、ずっと誰かと話してみたかった、それなのにこんな形で失いたくない。
俺は確信したんだよ…
「お前らは俺の友達だろ!!!!」
もう二度とこんな出会いはない、友達になりたいなんて思わせてくれる奴らは初めてなんだよ!!!
「俺は違う!!離せ!
りんはお前の友になれる!
早く俺を離せ!!」
「私だって違うわ!!
白が翠の友達だよ!!」
あのさぁ…あのさぁ…!!!!
「俺嫌われてんのかな!?
何で二人ともそんななんだよ!!!
俺は二人とも助けたいんだ!!!」
俺の心の叫びを踏み躙るように蜘蛛どもは二人を引っ張り合う。
肩が外れるのは時間の問題だった。
「嫌いじゃないよ!!
このままじゃ翠が…!!」バキッ!!!
右肩から聞き慣れない音がして、感じた事のない痛みに白目を剥いた。
肩が外れやがった。
「「翠!!」」
もちろんその音を二人は聞き逃さない。
「離して!もう離して!!
お願いだよ!翠!お願い!!」
りん、泣くな。
ただ肩が外れただけだ。
バキッ!!!
「ギャッ!!!!」
次は左の肩が外れた。
そりゃもう痛いなんてもんじゃない。
意識が朦朧としてきた。
「……な…て!!!す…!!て…!!」
りんが叫んでる、でも聞こえない。
「いい!!!…す…!!!なせ!!!」
白も何か言ってるな、聞こえないけど。
頑張れるよ、俺は。
絶対離さない。
絶対に離さないからな。
で、後で言うんだ。
俺は我慢強いだろ?って。
きっと二人は泣いて怒るだろう。
今だってなんかギャーギャー言ってるし。
文句なら後で聞いてやる。
殴られたっていい。
俺はこの手を離さない。
死んでも離さないからな。
「離さない…絶対に離さない………俺はまだ頑張れる…大丈夫だから…俺なら大丈夫…離さない…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます