桜華

あの女…!あの女のせいで遊雷様が手に入らなない!!!

たかが贄の分際で!!

畜生のようになぶり殺された卑しい女のくせに!!!


どうしてそんな女のせいで私が遊雷様と一緒になれないのよ…!


今まで私と遊雷様を繋げていたのは先祖同士の口約束のみ。


それを死人の戯言だと言い張られたら私に出る幕はない。


今までそんなことは一度も言わなかったのにどうして…!


あの女が来てからだわ…。

そうよ…あの女が遊雷様を誑かしたのよ。


大人しく待っていれば確実に私の物になるはずだった方を横から奪い取られた。


搾取され続ける贄のくせに神である私から何か一つでも奪うなんて…!


絶対に許さない…あの女だけは絶対に…! 



 今はいいけど、あの女が遊雷様に擦り寄って何もかも手にする前にどうにかしないと。


あの人の隣には私が立つ。

私のために用意された場所なんだから。


「影。」


私が呼ぶと顔を隠した男が一人現れる。


「ここに。」


これは私の護衛だ。


先先代当主の贄で顔に醜い傷があるからこうして隠している。


「あの卑しい女を殺して来なさい。」


この影と言う男は元々は下界の忍で暗殺や偵察を得意としていた。


「白はいかがなさいますか?」


あぁ、白ね。

見てくれはいいけど、私に懐くことのない可愛げのない贄だった。


別に、白がどこでどうなろうが私には関係のないことよ。


「別にどっちでもいいわ。

邪魔なら殺しなさい。

贄なんていくらでも手に入るのだから。」


「御意。」


影はすぐに姿を消した。


本当に不気味で気持ち悪い男だこと。

やはりどんなに仕事ができたとしても所詮は贄ね。

これで少しは気が晴れたわ。


あの女、早く死なないかしら。

どうせなら苦しめて殺すように言えばよかった。

死体を裸にしてその辺に転がすのもよかったわね。

こんな事を一瞬で考えつく私は天才だわ。


私は今遊雷様たちと一緒にいるから絶対に疑われない。


やはり、邪魔者は消すに限るわね。


このことを両親にも伝えておかないと。

遊雷様から婚姻はないものとすると言われたけど、覆るのは時間の問題だ、とね。



あの女が死ねば、あの人の隣はもう私しかいない。

絶対に逃さないわ、遊雷様は私のものなんだから。

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