遊雷

醜くどす黒い感情が抑えられなかった。

僕が何をあげても言ってもしても、りんはにこりとも笑わなかったのに…。


僕が欲しかった物をアイツは最も簡単に奪い去っていく。


たかがその辺に生えていた雑草でりんのあんなにも可愛い笑顔を引き出した。


僕には全く笑いかけてくれないくせに。


「遊雷様、お叱りなら俺が受けます。」


さっきからずっとりんを庇ってるね。


まるで自分の物みたいに。


「だ…駄目!

遊雷様!ごめんなさい…っ!

もう二度と騒ぎません!静かにしていますから!」


「っ…!」


突然の出来事に僕は驚きを隠せなかった。


まさか、りんが僕の足元に縋り付くなんて。


これで本当によく分かった。


りんは、本気で僕の事を怖がっている。


何で…何で何で何で…?

縋りついてほしい訳じゃない。

怖がらせるつもりなんてなかった。


りんを起き上がらせようと肩に触れたら、りんがもっと体を震わせて泣き始めた。


僕に殺されるとでも思ってる?

僕がそんなにも怖い?

今これ以上何かしたら僕は一生りんの心には触れられない。


りんに拒絶されるのが嫌で怖くてそっと足を引いた。


「桜華。」

「はい、遊雷様。」


とにかく今は離れた方がいい。


「何だっけ、さっき話してたやつ。

あれ、見せてよ。」


これ以上近付けば僕はりんを失う。


「……あぁ、青い桜ですか?」


確かそんな話だったよね。

よく聞いてなかったから知らないけど。


早く、りんの目の前からいなくならないと。


「うん、それ。

案内してよ。」


僕がりんに背を向けて桜華の隣に立つと、桜華が嬉しそうに答えた。


「は…はい////」


りんの顔が見れなかった。

僕に見逃されたと安心した表情をされたら本当に堪らない。


桜華が歩き出し、僕もそれについて行く。


「兄様…。」


雷牙は悲しそうな表情で僕を見た。


「雷牙もおいで。」


そんな顔しないでよ。

僕だってどうしたらいいか分かんないんだからさ。

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