雷牙

朝目が覚めたら自分の部屋の畳で寝ていた。


昨日の夜、兄様に気絶させられてそのまま部屋に放り込まれたんだろう。


かなり重い一撃だったせいか眠りが深かった。

おかげで最近の寝不足まで吹っ飛んでいた。

こんなに体が軽いのは久しぶりだな。


身支度を整えて朝飯でも食おうかと廊下を歩いていると…


「ねぇ………雷牙………。」

「わ。」


目の下に隈を作った兄様と遭遇した。


風呂に入っていたのか?

髪が濡れているな。


「寝れなかったのか?兄様。」


こんなにげっそりしているし機嫌も悪そうな所を見るとりんの貞操は大丈夫そうだな、よかった。


「うん……いろいろ考えてたら寝れなくなっちゃってね……。」

「あぁ、そうか…大丈、うわ!」


俺がこんな声を上げたのは兄様に肩をガッチリ掴まれたからだ。


「何だ!兄様、痛いだろ!離せ!力強いな!!」


肩が粉砕したらどうするんだ!

馬鹿力の自覚はないのか!?


「女の子…。」

「は?」


何?女の子?


「最近の若い女の子ってさ…何が欲しいの?

何をあげたら喜ぶ?」


「さ…さぁな……。

女が喜ぶかは知らんが下界では竹とんぼが流行っているらしいぞ。」


兄様はゆらっと首を傾げた。

顔が怖い、妖怪か何かか?


「竹とんぼ…?そう、分かった。

百匹くらいあげたらいいかな?」


「一個でいいと思うぞ。

匹ってなんだ?」


「分かった…竹とんぼね…竹とんぼ…。

雷牙、今から落神殺しに行こう?

僕、竹とんぼ百匹捕まえないといけないから。」


「いや、兄様。

竹とんぼなんて種類は存在しない。

それからもう一度言うが一つでいいと思うぞ。」


「え?下界で人気なんじゃないの?」


「あぁ、人気だ。

でも竹とんぼはいないんだ。」


「どういう事?」


「だから!竹とんぼなんてものは存在しないんだ!

捕まえるのは不可能だと言っている!」


「???

じゃあ竹とんぼは存在してないの?」


「存在している!

竹とんぼなんてものはいないんだ!

何度言わせたら気が済むんだ!」


「雷牙大丈夫???

昨日頭狙ったけどこんなに馬鹿にするつもりはなかったんだよね、ごめんね?

それより虫取り網あったっけ?」


「だから!そんな虫はどこにもいないんだ!

いい加減にしないか!」



このような攻防が1時間弱続いて、結局兄様と俺が理解し合うことはなかった。


あまりにお互い理解ができないので結局移動しながら話すことに。


「だから!とんぼだがとんぼじゃないんだ!」


「竹とんぼなんでしょ?」


「あぁ!竹とんぼだ!見たことあるだろ!!」


「ないよ、そんなもの。」


「あるに決まってるだろ!!飛ばすやつだ!」


「とんぼが飛ぶことくらい知ってるよ。」


「だから!!とんぼじゃないんだ!この間抜け!!」


「結局どっちなの?とんぼなの?とんぼじゃないの?」


「だから!とんぼだがとんぼじゃないんだ!!」


駄目だ、兄様が馬鹿すぎる!!

何で竹とんぼが分からないんだ!

竹とんぼだぞ!?

見たことあるに決まってるだろ!!!

もういい加減、胃が痛くなってきた!!!


「もう、雷牙の説明じゃちっとも分からないよ。

役立たず、怒りん坊、ハゲ。」


おいおいおい…


「俺は禿げてないだろうか!!!

兄ちゃんがとぼけ…//////」


しまった…//////


「うん、うん、兄ちゃんよく分からないんだよね〜。」


この!くそ!!ニヤニヤするな!!!!


「そんな事言ってない!!」


「言ったよ。子供みたいに兄ちゃんって。

あー、可愛い可愛い。」



くっ………くそっ…///////

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