りん

遊雷に抱き上げられて部屋に戻ればすでに布団が敷いてあった。


「りん、少しだけ待ってて。

桜華の文の返事を書かないといけないから。」


「うん、分かった。」


桜華様、か…。

何でも面倒くさがる遊雷と文のやり取りをするなんてすごい。

文…か。

字が書ける人はいいな。


私もいつか、遊雷と文のやりとりをしてみたい。

なんて、そんなの図々しいか。

神様と文のやり取りなんて私は一生できない。

遊雷が優しくするからって忘れないでよ。


りん、あんたは所詮ただの冴えない贄なんだから。


私が少し落ち込みそうになっていたら…


「あー、床は快適だなー。

こーんなにいい床はうちくらいだ。」


部屋の少し離れた所からだと思うけど、雷牙様の声が聞こえる。


床は快適??

一体どうしたんだろう?


「遊雷。雷牙様、大丈夫かな?」


「あぁ、大丈夫だよ。

あんなの放っておこうね?」


え、でも…。


「あー、背中が痛すぎるなー。

暇だなー、暇すぎるから兄様が手を出した女の名前でも言って行くかー。」


雷牙様がそう言った瞬間、遊雷がサッと立ち上がったかと思えば一瞬で…


「え!?」


この部屋から消えてしまった。


「なぁ、兄様ー、あいうえお順か出会った順、どっちがいいか選んでくれ。

人数が多すぎて大変だからなー。」


「本当に雷牙は作り話が上手いねー。

僕が大勢の女に手を出したって?

馬鹿じゃないのー?」


二人とも部屋の外にいるのよね?

それなのに襖の閉まったこの部屋までハッキリと聞こえる。

二人ともかなり大きな声で会話してるよね……?


耳が悪い人は声が大きくなると聞いたことがあるけど、二人とも耳が悪いのかな?


「選べないみたいだから、出会った順で言ってやろうな?

まず、水の神の睡蓮だろ?その次は火の神の、あ゛っ!!

兄様!!何するんだ!!無抵抗な弟相手に!!」


「えー、僕って一人っ子だった気がするー。」


「おい!それはやめろ!兄様!おい!!

ふざけるな!冗談だろ!おい!兄様あ゛ぁあ゛!!」


!?


え!?雷牙様大丈夫!?

今すごい悲鳴が聞こえたよ?

一体外で何が…。

気になるから少し見に行ってみようかな? 


立ち上がり襖を開けようと手を伸ばしたら、大きな手が私の手首を優しく掴んだ。


「どこ行くの、りん。」


あれ???遊雷の声だ。

いつ戻ってきたの??


「雷牙の事が気になる?」


表情が見えない。

遊雷は今どんな顔してるのかな?


「それとも、僕と離れて寂しかった?」


何にしても、遊雷に会いたかったと言った方が良さそう。

本能がそう言ってる。


「うん、遊雷に会いに行こうとしたの。」


私がそう言うと遊雷が私の体をくるっとひっくり返して向き合わせた。 


「そっか、そっか。

りんは可愛いなぁ。」


遊雷は私の足が浮いてしまうくらい私をギュッと抱きしめた。


「大丈夫だよ、僕がずっと一緒にいるからね。」


遊雷、本当に大きいな。

私をこうしてすっぽりと抱きしめてしまうんだから。


「うん…すごく嬉しい。」


本当に、心の底から嬉しかった。

私は遊雷が大好き。

遊雷がいたから頑張って生きていた。

今はもう生きてるのか死んでるのかよく分からないけど前の人生よりも幸せなのは確かだ。


ありがたいことに、遊雷は今私を気に入ってくれている。

可愛いと言って側に置いてくれているその事実が嬉しい。

だけどこれが永遠に続くとは思っていない。

遊雷だって感情がある。

私に飽きるのは時間の問題だ。


私は無知で無力で遊雷と近しいものなんて何もない。

そんな私がいつまで遊雷の興味を保持できるだろう。

そして、遊雷が私に興味を持たなくなったら私はどうなる?


この邸から追い出されるか、殺されるか、まるで最初からなかったかのように無視をされるか。  


死にたいわけじゃないけど、一番楽なのは二番目かな。

正直、今の私は遊雷がいなければ生きている意味のない死に損ないだからだ。


「このまま寝ちゃおうか。」 


かなり上機嫌の遊雷。

遊雷の機嫌がよかったら私も嬉しかった。

遊雷のニコニコ笑った顔がすごく可愛くて大好きだから。


「うん!あ、駄目だよ!」


勢いよく返事をしてすぐに訂正した。


「どうして?」

「桜華様の文の返事を書くんでしょ?」


流石にそれは書かないとね。


「そんなの明日でいいよ。

せっかくりんが甘えてくれたのに文なんか書いてられない。」


嬉しいけど、ちゃんと文は書かないと。

私は少し意地悪を言ってみる事にした。


「遊雷は下っ端の神様なんでしょ?

文の返事が遅れたら怒られたりしないの?」


本当は下っ端じゃない事は知ってる。


遊雷が私を助け出したあの日、遊雷の雷に怯えた神達が皆ひれ伏した。

山神とは明らかに違う。

山神なんて桜華様のお付きの者に罵られていたくらいなんだから。


「下っ端の返事なんて誰も待ってないよ。」


遊雷はそう言って布団に座ると私の手を引き膝の上に座らせた。


「だから、僕と一緒に寝よ?」


最後にコツンと額をくっつけられて真っ赤になる私。


こんな事を思うのはおかしいのかな…?

口付けしたい…なんて。 


私はきっとどうかしてる。

遊雷に優しくされて変になってしまったんだ。


口付けしたい……。

けど、していいか分からない。

それを聞くのも恥ずかしい。

でも…したい。


胸の鼓動が激しくて苦しい。

理性が揺らいで頭もボーッとしてきた。

それを言い訳にしたい。


「ん。」


私は我慢できなくなって遊雷に口付けした。


勝手にして怒られるかもしれないからすぐに離れようかと思っていたら…


「んっ!?////」


遊雷に押し倒されてしまった。


ただの口付けだと思っていた。

遊雷が私の唇を優しく噛むまでは。


「///////!?」


「りん、あーんして?」


遊雷が何をするのかは知らないけど、私の唇に優しく触れてきた。


私は遊雷に言われた通り恐る恐る唇を開く。


「そうそう、そのままね。」


そして何をされるかも分からないままもう一度口付けをされ、遊雷の舌が私の口内に入ってきた。


「//////////」


驚いて顔を逸らそうとしたけど深い口付けがあまりにも気持ちよくて頭がクラクラする。


「ん………ぁ……//////」


遊雷の舌、熱くて柔らかくて気持ちいい…。

でも、私の胸の中では心の臓が大暴れしていた。


「はぁ…はぁ…はぁ……/////」


唇を離されて自分の息が上がっている事に気が付いた。

夢中になっていたんだ。


「気持ちよかった?」


遊雷が優しく聞いてきたから私は頷いた。


「そっか、嬉しいなぁ。」


遊雷はご機嫌そうに笑うと私の着物の帯を解き始めた。


「ゆ、遊雷…?」


何するつもり?

何で帯を解くの?


「りんが怖がる事はしないよ?

ただ…。」


遊雷が解いた帯を放り投げて私を裸にさせた。


「僕と気持ちいい事して遊ぼう?」


ゆらゆらと揺れる灯の中、遊雷は私を見ながら自身の着物を脱いだ。


遊雷は本当に着痩せをする。

こうして着物を脱がなければ遊雷の体が逞しいなんて分からない。


「僕の体見て楽しい?」


「え!?いや、あのっ…////」


ジロジロ見て失礼だったかな?

無礼な女だと思われたらどうしよう…!!

早く何か言わなきゃ!


「遊雷がすごく…格好いいから…見惚れてしまって…/////」


結局取り繕うなんて器用なことはできず本音を言っただけ。

こんな間抜けな女はどこを探してもいない。


「格好い?僕が?」


遊雷はキョトンとした。

まるで初めて言われたかのように。



まさか、そんなことないよね?

遊雷は本当に格好良くて素敵な神様だから。


「うん…。遊雷は本当に格好いいよ////

私が見てきた男の人の中で一番…/////」 


もう誰が私を黙らせて。

余計なことばかり言ってしまう。


「一番かぁ…/////」


遊雷は少しだけ頬を赤く染めて嬉しそうに笑った。


「それ…すごく満たされるね。」


その笑った顔が可愛くてまた見惚れてしまった。


「お返しに、僕もりんの事たくさん善くしてあげるね?」


「っ…//////」


聞き返すまもなく遊雷が私の胸元に口付けをした。

大きな手で私の片胸に優しく触れて、もう片方の胸を…


「ひゃっ/////」


舌先で優しく転がしている。

変な声を上げそうになった瞬間、遊雷の唇が私の肋骨へ逃げた。

唇はゆっくり下がっていき、ついには腰に口付けされる。

くすぐったくてゾワゾワしていたら遊雷が私の股を容赦なく開かせた。


「え…?」


うそ…でしょ??

見られてる…!

こんな恥ずかしい格好嫌だ…//////


「遊雷っ…//////

これやだ/////」


足を閉じようとしても遊雷がそれを許さない。

私は全力でやってるのに、遊雷は顔一つ歪めなかった。


「み…見ないで…/////」


手で隠そうとしたら、さっき遊雷の着物の帯が飛んできて素早く両手首を縛り上げた。


そして手首は勝手に私の頭の上で固定される。

こんなの拷問だ、恥ずかしすぎる/////


「大丈夫、大丈夫。

力抜いてて?」


何が大丈夫なの!?力なんて抜けないよ!?


恥ずかしくて頭が爆発しそうになっていると、遊雷が私の内腿に優しく口付けをした。


「……や……待って…//////」


遊雷の唇が私の真ん中へ近づいて行ってる。

まさかそんな事しないよね?

内腿だけだよね?


そう何度も自分に聞くけど、答えは案外すぐに分かった。


ちゅっ。

「んぁっ///////」



まさか、と思っていた刺激が与えられ腰が跳ねる。


咄嗟に足を閉じようとしたけど、遊雷の手で阻止された。


「可愛い…。もっと聞かせて?」



遊雷は優しく笑うと、容赦なく私のそこにまた口付けをした。

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