遊雷
「〜♪」
最近、何だか楽しいなぁ。
「
あ、
雷牙はどうしてか今日も怒ってる。
「弟よ、どうしたの?
そんなに怒ってたら祟り神になっちゃうよ?」
怒るのは体にも良くないって聞くしね。
何かが上がるって言ってた、忘れちゃったけど。
「兄様のせいだろう!!!
今日も下界をほっつき歩いて一体どう言うつもりだ!
毎日毎日何をしている!!」
わー、大変だ、怒ってる。
「そんなに兄の事が知りたいなんて、僕の事好きすぎてちょっと怖いよ?」
僕がそう言うと雷がゴロゴロと鳴り始める。
これは大変だ、もっと怒らせてしまった。
「なぁ、兄様………勘違いも下界をほっつき歩くのも結構だ、だがやる事をやって行ってくれ!
俺たちが
下界が混乱、か。
「別に僕はどこがどうなろうとどうでもいいなぁ。」
人間なんて掃いて捨てる程いるし。
「はぁ…兄様、頼む。
人間に興味を持ってくれ。
興味がないから落神たちの片付けも億劫なんだろう?」
興味かー。
「まぁ、気が向いたらねー。」
別に僕は雷牙が生きていればそれでいいし。
人間が滅んだところで神に何の影響もない。
けど……
どうして、りんの顔ばかり浮かぶんだろう。
りんが可愛いからかな?
「あのなぁ、兄様。
何百年も同じ台詞を」
「はいはい、いい子いい子。
今日もお仕事頑張ってね、雷牙。」
疲れている弟の頭を撫でると雷牙は違う意味で顔を真っ赤にした。
「兄様!!子供扱いするな!!
そして俺だけに仕事をさせようとするな!」
はいはい、可愛い可愛い。
「そんなに僕とお仕事したかったら僕を捕まえてごらんよ。」
まぁ、無理だろうけど。
「待て、兄様!行かせないからな!!」
すごく必死に縋り付いて、雷牙はやっぱり面白い。
さすが僕の弟だ。
「じゃあ、またねー。」
「あ゛!兄様!待て!!!」
雷牙を少しビリッとやったら怯んだからその隙に雷牙の手をすり抜けて下界へ飛んだ。
きっと今頃カンカンに怒っているんだろうなぁ。
雷牙は怒っても可愛いから別にいいけど。
後数百年はこうして遊んでやろう。
雷牙の相手も終わったし、今夜もまたりんに会いに行こう。
今日はどんな話をしてあげようかな。
いつもの所で待っているけどりんは来ない。
この時間ならいるはずなんだけどなぁ。
なんて思っていたら小さな足音がパタパタと聞こえる。
姿を現して腕を広げた。
毎日毎日、りんは無邪気に僕に抱きついてくる。
懐いているみたいで可愛いからどうしても腕を広げてしまうんだよね。
でも今日は…
「りん?」
りんは何故か僕に抱きついて来なかった。
りんはずっと俯いていて顔を見せてくれない。
「遊雷…。」
どうしたんだろう。
いつもと明らかに様子が違う。
「りん、どうしたの?
もしかして虐められた?」
愚かな人間に何を言われても気にする事なんてないのに。
「ほら、顔を見せて?」
りんの顔を上げさせた。
その時に生まれて初めての感情が僕の中を突き抜けた。
「……え?」
何?どうしてそんなに頬を腫らしてるの?
額も切れているし、左目なんて開いてない。
「遊雷…ごめんね、本当はこんな顔見せたくなかったんだけど、遊雷に会いたかったから…。」
りんがすごく悲しそうに泣いていた。
「こんな悍ましい顔でもこれから会ってくれる?」
沸々と自分の中で何かが湧き上がって来た。
何だろう、これ。
すごく不快だ。
まぁ、僕のことはいいや。
とりあえずさ、
「誰にやられたの?」
いつもならどうでもいいと流せるけど今夜は無理だ。
どうしてか理由は分からないけどすごく苛々する。
「集落の…若い男に。
着物を脱がされそうになって抵抗したら生意気だって…言われて…。」
それでりんの顔を殴ったのか。
そう…そっか。
こんなに可愛いりんの顔に…ね。
「大馬鹿者の名前は?」
「え?」
「僕の可愛いりんをこんなにした男の名前は?
名前さえ教えてくれたらいいよ。」
りんは少し戸惑いながら答えた。
「……///// ハチ、だよ。」
へぇ、ハチね。
「そっか、ありがとう。」
「でも、名前なんか知ってどうするの?」
さぁ、どうしてやろうか。
「りんは何にも気にしなくていいよ。
それより今夜は僕に抱きついてくれないの?」
僕が聞くとりんは嬉しそうに笑って僕の懐に飛び込んできた。
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