第91話
「……さっきの人、知ってたんですか」
「まァな?じゃねェとあの部屋から出て来たヤツに、無鉄砲に喋りかけねェよ」
「……バレるとか思わなかったんですか?」
「あ?思わねェな。アイツは、生徒会の中じゃ鈍感だし、すぐボロを出すタイプだ。そのクセ、名前呼ばれただけで、警戒心を解いただろ。…自分の事を知ってると思って口が緩んだんだな、アレは」
「……」
「しかも櫻田って名前をコッチから出しただけで、尚更、警戒心が薄くなって……ホント、村雨はアホだな」
全て、計算だったというのか。唐突に起きたと思っていたそれは、全て冬馬さんの手のひらで動かされていて、全てが作戦通り、とでも言うのだろうか。
でも、そう言われてしまえば、納得してしまう。あの怪しさ満点の冬馬さんの態度はいくらなんでも危う過ぎた。終始ニヤニヤしていたのにも合点がいく。
してやられたような気分だ。
神山冬馬という人は、本当に、読めない。
「ま。櫻田が暴れてたなんて嘘だけどな。…アイツが否定せず、管轄って言葉を出した時点で、櫻田関連は、確実に八神達が手を引いているってこった」
欠伸を噛み殺しながら、先ほどの数分足らずのやり取りの裏側をまるで糸を解くように説明する。
こんなに長く一つのことを話す冬馬さんは珍しいかも知れない。簡潔に物を言う人なのに。
「つまり、櫻田をムショから出したのもアイツら。コウナンと手を組んでるっていうのも、疑惑から確実なものになっちまったわけだな」
「ムショって、櫻田って人は……捕まってたんですか?」
「ああ。親を殺したからな」
「……」
淡々と口にする冬馬さん、歩くことを止めた俺を振り返り、「どうした」と何食わぬ顔で言う。
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