置いてきた鎖

第84話









「あの……」


「なんだよ」


「本当にバレないと思いますか?」


「ああ?オマエ、ゴンさんたちの腕を信じてねェのか?」


「いえ、そういう意味ではなくて…普通、バレませんか。敵陣に真正面から入るって」


「こんなもん、堂々と入った方が案外バレねェんだよ。しれっとしとけ、しれっと」


「しれっとって…」


「慎重なヤツだなァ」


ハッと八重歯を見せながら、ズカズカと豪勢な門を潜りぬける。俺はその後を追いながら、度の入っていないメガネを掛け直し周りを見回した。


舗装された道の上を、お付きの人と一緒に歩く生徒もいれば、音楽を聴きながら颯爽と歩いて行く生徒、集団で歩く生徒、様々な人たちが歩いている。




―――数時間前、冬馬さんの友人と言われて紹介された男の人二人に、制服や変装道具と言ってメガネを渡された。


「お前は顔バレしてなさそうだし、そのくらいで平気だろ。それ着て待っとけ」


そんなことを言いながら、冬馬さんはその友人の一人、メーテルと名乗った男の人に髪を黒く染めてもらっていた。


言われた通り、白っぽい色合いをした制服を着て、メガネをかける。


久東院の制服は前にいた学校を思い出させて、少しだけ目を逸らした。酷く嫌って言うわけじゃないけど、なんというか、あまり見ていたくはない。



「お主、本当にハニたすの弟なのか~?」


「え、」


「どっからどうみても似てないぞ…?いや……でも似てるのか…?むむむ」


小太りの、確か名前をゴンザレスと名乗っていた男の人が掛けてた丸眼鏡をくいくい、と上下させる。


「あ、えと……」


その妙な名前は恐らく姉のことを言っているんだろうけど、少し反応に遅れた。

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