第77話

「別にー。俺はトップの味方だからトップのしたいことがあるならそっちを優先させたいだけー」


「ねー」っとあたしの隣にやってきて、いつもの調子で同意を求めてくる。


「プリンたべる?」


「あ、い、いえっ」


「そっかぁ」


少し残念そうに、スプーンですくったプリンを自分の口に運ぶアカネくん。


「チッ、面倒なヤツ手懐けやがって」


ぼそっと呟きながら、泰司さんは何故かあたしを睨む。「ひっ!」と喉の奥を鳴らしながら、あたしはアカネくんと泰司さんを交互に見た。


な、何か気に障ることでもしたのだろうか…?


「でもなんにせよ、今は待て。冬馬達が帰ってからでも遅くはない」


「冬馬さん…あ、伊吹は…?今、どちらに?」


泰司さんが眉をピクリと動かす。そして、アカネくんをチラ、と見て、一度考えるように口を閉じた。


「泰司さん……?」


首を傾げたあたしに、



「クトコウにいる」


そう、一言。


くとこう、って……、


「えっ…?」


「大丈夫だ、変装させてっから」


「え、えっ?そういう問題なんですか!?」


「サクラダの件、それからミクの件、それから……まだ、確信を取れてない案件がいくつかあって…それの調査というか、…ま、別に乱闘しに行ったわけでもねえし大丈夫だろ」


「とっ、」


冬馬さんなのに!?

なんて、失礼なことを思いそうになったけれど、慌てて首を振る。



「だっ、大丈夫なんですか!?…途中でバレたりしたら…っ」


「冬馬は元クトコウだからな。学校のことは色々把握してるし、その辺は…」


「へっ!?そうなんですか!?」


「ああ。それに、今回はオマエの弟もついてってんだ。多少はストッパーになってるんじゃねえの」


「なんでそんなに軽いんですか!?と、っというか、なんで伊吹が…!」


だって、そんなこと、一言も言ってなかったのに…。

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