それは遠い絆
第69話
泰司さんに連れられて来たのは、溜まり場だった。
周りに人はいない。先ほど、泰司さんが全員を外に出したから。
行き慣れた場所とは言えど、建物の古さも相俟って、こうも閑散とすると少し寒気を感じて、妙な怖ささえ覚える。嫌な気分だな。
それに、
「……え?どういうこと…ですか?」
今し方伝えられた〝それ〟が、あたしの嫌な気分を更に加速させる。
「だから、オマエには学校の番をだなァ…」
「そこじゃありません!どうしてっ、リュウくんたちが…病院に…!?入院って…!」
「色々トラブったんだよ。大したことねえ。コノエは軽傷だったし、リュウは…一日入院しただけで、今は多分、家だろ。昼間には帰るって連絡あったしな」
「そ、んな…大丈夫なんですかっ…?」
「トラが見舞いに行ってるところだ。お前が心配することは何もない」
「でもっ」
「いちいち狼狽えるな。こういう事態も含めて、コッチ側に来ると決めたのはオマエだ」
「っ…はい、…すみません」
長い脚を組んで、ソファに座っていた泰司さんが、向かい側に座っているあたしを静かに見た。
そうだ、決めたのはあたしだ。
こんなことだから、みんなに支えてもらうばかりのトップなんだ。
変わらなきゃ、変わらないと、みんなのために。
それでも、頭の中が混乱していたからあたしは掴むように自分の両頬を叩いた。
バチンッと、良い音が鳴って、泰司さんにしては珍しく、びくっと驚いて。
「なっ、にしてんだお前…?」
「きっ、気合いを入れました…お気になさらず……」
「あ、ああ…」
痛みで滲む涙をぐっと堪え、泰司さんに向き直る。
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