第62話

やっぱり呆れたように言って、水波は歩いてどこかに行こうとする。


「どこ行くの?」


「次、試合だから」


「ええ!俺とはしてくれないのに!?」


「さっきしたでしょ」


「もっかい!もっかいしたい!勝つまでしたい!!」


「しつこいな…」


立ち止まった水波は少し怒った様子で振り返りながら、俺の顔を見た。



「だったら、また次の大会で会えばいいでしょ」


「!」


「じゃあ」



水波はそのまま踵を返して歩いて行く。


次の大会…、そっか次があるんだ。水波はまた、俺と試合してくれるんだ。



出来れば今すぐやりたいけど、水波が言ってくれた。次があるって。


これっきりじゃない。そう思うと、胸の奥がうずうずして、もっともっと強くなろうって思った。


今度は追いかけるんじゃなくて、追いかけてもらえるように。


だけど、次の大会から水波は姿を消した。せっかく力をつけても、水波と勝負が出来ないんじゃ意味がない。


また、楽しみがなくなったな。あーあ。



ショックを紛らわそうと街をぶらぶらしていたら、めちゃくちゃキラキラ…っていうかお洒落な男の人に声をかけられた。


「ねえ、きみ」


え、俺に声かけてるよね。



「カットモデルとか興味ない?」


「カットモデル?」


何それ、カットすんの?モデルを?

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