第60話
「空手の大会ですか?楽しそうじゃないっすか!」
ひと暴れした事件の後、俺は学校に行かなくなった。
というか、どうでもよくなった。どうせみんな死んだら同じだし。行くのも無駄無駄。
結末はどうなったかは知らないけど、親父が事を荒立てないように、学校側と交渉したのだろう。
「どうせみんな……俺より弱い」
つまらない。だって、どうせ勝つんだろ。
あいつらが、俺に謙ったように。血を流したように。
「そうとは限らないと思いますよ?」
「……シノは俺が弱いっていうの?」
「うーん、弱いとは思いませんよ?同年代の子には負けないんじゃないっすか?」
「………同年代じゃなくても勝つし」
「だったら、これに出て証明してくださいよ!」
家の中じゃわりと話す、シノって言う舎弟の一人が俺に向かってそんなことを言ってきたのがきっかけだった。
単なる暇潰しだと、そんな思いで参加した空手の大会。勝ち進んで、全国大会に行った折に〝あいつ〟はいた。
涼しい顔をして、俺との試合に挑んでいた、あいつ。
「判定、白の勝利! 互いに礼!」
「……」
「ありがとうございました」
さらっと勝利を手にして、俺の前からいなくなる。
初めて負けた、……同年代のヤツに。
それが衝撃的で、試合が終わった後は暫く放心状態だった。
家に帰ってから初めて対戦相手の名前を調べた。
「水波…伊吹」
それがあいつの名前だった。
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