☆17

夢なき少年の話

第57話

「………」


身体を横にしてるから、涙が横に伝って変な風に流れていく。


泰司さんが来た時から、正直危なかった、のに。

なに、最後の。


ばかなの、いや、ばかだよ。トップは、ばか。


それに卑怯、卑怯だよね、うん、卑怯。

卑怯だしあほだしばかだし、


なんであんなあっさり受け入れられるんだろう、


俺でさえ、これが、


この〝痕〟が、


ガリガリガリガリガリガリ。


いくら掻いても消えない、この〝刻印〟が、大嫌いで大嫌いで大嫌いで、


ガリガリガリガリガリガリ。


肌を焦がしてでも消したいって思ってるのに。


ずず、っと鼻を啜って、身体を倒して、空を見る。

ずるい、ずるいよね。



『片柳は片柳』


水波っていう姉弟はさ、


『アカネくんはアカネくんです』


なんでこんなに、ずるいんだよ。

























「片柳…くん……それ…何…?…痣…?」


「え…?」


中一、文化祭の出し物の準備をしている時、他の友人たちとふざけ合って水遊びした後に、制服が濡れた。


濡れたままではいられないし、トレードマークのように着ていたカーディガンをその時は流石に脱いだ。


だけど俺はその日、中に黒いシャツを着るのを、忘れていた。


別に誰に言われたわけでもない、ただ、なんとなく見せたらいけないような気がして、ずっと隠していた。


その〝模様〟を。


親父に無理矢理入れられた、この〝片柳〟の印を。



隠していた、警戒していた、していた〝つもり〟で、


実のところ、この〝模様〟がどれほどの影響を及ぼすか、とか、

そんなこと、細かく考えていなかった。

だってそんな12、3歳で、誰がそんなこと考えられるの…?


「これは……」


痣だよ、そう言って隠す前に、丁度近くにいた担任教師が俺の腕を引っ張り上げた。

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