第54話

「絶対そうだな。このエロガキが、俺の気配にすら気付かねえで素直に殴られて横になってんだ、そうとしか思えねえだろ」



ハァアア、とまた盛大な溜息をしながら、首を振る。


訳がわからぬまま、未だ倒れたままのアカネくんと泰司さんを見比べていると、泰司さんは「言っておくけどな」と睨むようにあたしを見た。





「こんなツラで、しかも脳みそはふわふわしててアホみてえで、一見無害そうだけどよ」



「あ、あほ…」



「手ェ早い方だからな」



「えっ、」



「一年じゃダントツだ」



「えぇ!?」



手が早い!?



それってつまり、




「…郵便配達とか……物凄いスピードで出来そう……ですね……」



「何言ってんだテメェは」



ブチ、と頭をキレさせつつ、「そういう意味じゃねえよド阿呆か」と、非常に低い声で返してきた。



「ひっ、す、すみませ…っ」



「手が早いっつうのはなァ、……なんつうか」



「……?」



「さっき、コイツがオマエにしてたみたいなことを、平気でさっさとしちまったり、」



さっき……?




あっ、と思いつつ、手のひらを叩く。


すぐに気付いたあたしに、泰司さんは舌打ちをしつつ溜息を吐いた。




「……オマエと話してるといつもの100億倍は疲れる」



「ひゃ、ひゃくおく!?そっ、れは…申し訳ない…です……」



「ホントに思ってんのかも怪しい…頭下げときゃいいと思ってねえか」



「いっ、いえそんなつもりは…!本当です…!!」



「………、とにかくコイツは、一年の中じゃダントツに手が早いド畜生エロガキなんだよ。だからオマエもちっとは用心して…」

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