第50話

「……なんだろうね…、」



「……、」



「俺がトップを押し倒してる…?」



「そ、それはもうわかってますっ」




じゃなくて、こうなった経緯をお聞きしたいのですが…っ、


と、言いたくても言葉が上手く続かない。




物凄く自然な手つきであたしの髪を耳の後ろに流していくものだから、そちらに気を取られてしまって、


その上、「ん?」と、本当に本当にいつもの調子であたしの顔を見下ろすから、本当に本当に本当に何故こんな状況になってしまっているのかわからない。




耳の形を確かめるように、



「っ、」



指で挟んで撫でられる。




そして頬、顎、首筋、と、



「ひぅ、」



その指が移動していき、


あたしは擽ったさのあまり、唇を噛み締め、その都度、身体をびく、っとさせた。


そんなあたしにアカネくんはやっぱりいつものように、




「トップ、肌柔らかいね、モチみたい」



「も、っもち……?」



「俺、モチ大好き。っていうかモチモチした甘い物。アイスの中じゃ雪見大福が一番好き」



「そっ、そうなんですね…」



「うん」



「……って、あの…っ?!」



「うん?」



「なっ、なんでボタンを外そうとしてるんですか…っ?」



「えっ、ダメなの?」



「えっ!?」



「ダメ…なの?」



もう一度言う。あたしの身体の上で、とてもしゅん、とした顔でこちらを見てくる。


あたしにはそれが、小動物の類に見えて仕方がなかった。

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