第48話

ふわ、と笑うアカネくん。


彼にしては珍しく、その柔い頬笑みに、


喉奥がひゅっと詰まる思いをした後、あたしはアカネくんに肩を引き寄せられた。



そのまま、ぎゅ、と抱き締められて、あたしの思考は数秒ほど遅れて動き出す。





「っあ、あの…!?」



「なんか、龍蔵さんとか冬馬さんが肩入れてる気持ちわかったな…」



「か、かた…?」



「トップって、なんかこう、手の中に収めて一生離さず愛でてたい気分にさせるよね。虫みたいな」



「むっむしぃいいいい!?そ、それは勘弁してくださいいいい」



「えっ、俺的最上級の褒め言葉なのに」




心底驚いた様子で少し離れて、またあたしの顔を覗き込むアカネくん。


そして、何を思ったのか。


至極真っ青な顔をしているあたしの頬を、




「しょっぱ、」




舐めた。



「……っ、」



いきなり舐めた。




びっくりして、カチンコチンと固まりながら見上げると、アカネくんは「ん?」と普通の顔をして、




「だって涙、拭いてなかったよ?」




わけのわからないことを言っていた。




『だって』も何もない。


何が一体『だって』なのか。

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