暴走×少年×少女５【完】

第46話

「…………どうしたの」

「……」

「どうして、トップが泣くの？」

泣く……？

「え……」

言われて初めて、自分が泣いていることに気づいた。

あ、あたしはまたっ…。

「すっ、すみませ…っ」

驚いてそれを指で拭おうとしたら、アカネくんに腕を取られた。

「……！」

「ねえ、どうして泣いてるの…？」

「こ、これは…っ」

「可哀想とでも思った？」

「ちっ、違います」

「だったらどうして泣くの」

いつも通りに、けれども活発入れずにアカネくんはあたしに訊ねる。

あたしは首を振り、

「わ、かりません…」

視線を下げて、たどたどしく答えた。

「た、ぶん、アカネくんが…」

「…」

「今まで、どんな日々をおくってきたのか、とか……」

「…」

「そういうの、考えたらっ…きっと悲しくなっ、っぶ！」

言い切る前にアカネくんが、両手であたしの頬を潰す。

「っ？…？」

「………悲しいって……自分のことでもないのに、よくそう思えたね」

「……、」

「本当に思ってる？…本当は怖いから、明日から関わりたくないって、泣いたんじゃないの？」

表情一つ変えずに、じっと、感情の乗らない目が、あたしをただ見つめている。

光は差しているけれど、無感情なその目が。

「違う？」

頬を潰された状態で訊ねられているので、答えられない。

かわりにその腕を掴むと、一瞬、力が弱まった。

刹那、あたしはその腕を引き寄せた。