第44話

「…いや、えと…」



「あたし、こういった模様が入った身体の方に初めて出会いました!触っても大丈夫ですか!?」



「…そうじゃなくて…」



「えっ、ダメですか!?」



「…い、いよ」




ぐいっと顔を近づけると、圧されたアカネくんは少し困惑したように眉を下げて頷く。


ぎこちない返事はどこかアカネくんらしくない。




「ありがとうございます!そ、それでは…」



そろ、っと指先で触れる。


撫でてみても、普通の肌となんら変わらなかった。


ただ、それが入っている。模様が、描かれている。


それだけだ。





そんなあたしを見下ろしながら、アカネくんはぽつ、と。




「怖く、ないの?」



「えっ?」



「こういうの、怖い人っているでしょ?……普通の人と違うし」



「怖いんですか?…これ」




見上げるあたしに、アカネくんはやっぱり困ったように眉を下げて、「トップって変だね」と、小さく言葉を零した。


そしてそれから少し間を空けて、アカネくんがゆっくりと口を開く。








「……これ、昔、父親に入れられたんだ」



「え、」



「中学上がる頃だったかな、いつまで経っても力をつけない俺に苛立った父親が…あんまり記憶にないんだけど。その時、喧嘩してたし、殴り合った末の制裁かな」



肩を撫でながら、アカネくんは思い出を語る…というよりも、淡々と、まるで事務的に説明していく。





「気付いたら、〝これ〟があった」



「…、」



「家のことも特に周りに言ってなかったから、必然的に〝これ〟を見せないようにしてたけど、人に肌を見せないようにするのって案外難しくって」



「……」



「ある時、クラスの女の子に〝これ〟を見られたことがあるんだ」

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