第42話

いや、違う。



ここでそれを思い出したのは、





「アカネくんの家は……堅気のお家ではないのですか?」



ハッとしたようにアカネくんが、顔を上げる。


なんで、それを……というような動揺がその目から読み取れる。





「ごめんなさい、知って…たんです……」



彼が、家のことを気にしてるだなんて思ってもなかったからだ。



アカネくんは自由気ままに生きている、と。


勝手に。


無意識の中で、そう決めつけて。




「でも、それが悪いことだなんてあたしは思っていません…引く要素もありません…びっくりはしましたけど…アカネくんがどこの生まれだろうと、アカネくんはアカネくんです」



「……」



「表情を出したいなら、ちゃんと出ていますよ?今だって、凄く驚いた顔をしています」




笑いながら、その目にかかった前髪を撫でるように上げる。


突然視界が開けたからか、整ったアカネくんの顔が少しだけびくっとした。





「怒ったときは怒った顔をしていますし、幸せそうなときは、とても幸せそうな顔をしています」



「……」



「人の変化に鈍感なあたしが、すぐに気付くのですから…自信を持って大丈夫ですよ」



「………トップって」



「はい」



「たまにすっごく、」



「?」



「大胆、だよね」



「……へ?」




アカネくんが途切れ途切れに、至極そっ、と口を開くので、あたしはハッとして、その柔らかい前髪から手を離した。




「ごっごごごご、ごめんなさいっ、あたしその…!さ、触られるのとか、嫌でしたよね…!?す、すみません!そんなお洒落な髪にあたしのようなものが触っ、」



「全然」



首を振って、アカネくんは膝を地面につける。



「むしろ、」



そして、あたしに近づきながら、




「もっと触ってほしい」

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