第34話

「持ってきましたよー………って!!何してるんですか!?」




今日も似合わないノンフレームのメガネをずれ落としながら、里見は持っている水とタオルを握り潰す。


零れるだろう、とツッコミたいけれど、そんな余計な体力を今のところ持ち合わせてはいない。





「やっぱ学校行くから…スマホ」



翡翠は優れない顔色のまま、制服のシャツを着ながら里見に手を伸ばしていた。


熱が出てからは、携帯を里見にとり上げられている。


里見としては、何か外から連絡があればすぐに外へと出てしまう翡翠の身体を思ってのことだったのだが、彼にとっては迷惑千万な話だ。







「ダメです!今日は安静にしていてください!熱もあるんですよ!?怪我してるのに無理して連日身体動かしてるから」



「無理だ。俺はな…学校じゃ割と頼られてるほうなんだよ…」



「…だから何だと言うんですか?」



「だから、俺が行かないと、どうにもならないことだってあるかも知んねえんだよ」



「いやいやいや逆にアナタが行ったら、どうにかなることもどうしようもなくなる気がするんですが!?だって何も出来ないでしょう、その身体!!ふらっふらですよ!?」



「うるせえいいから返せ」



「嫌です!!」



「じゃあ退け」



「嫌です!!」



「チッ…、良いからスマホ返してそこ退けって…!」



少々声を張って、里見の肩を強く掴んだ瞬間、




「………はぁ~ん!!」



「!?!?!?」

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