第25話
先ほどまでとはまた違った不安が過った瞬間、
「大丈夫だよ」
「…え?」
「トップが心配しなくたってそのうち帰ってくるよ」
「…理由は…聞かせてもらえないのでしょうか…?」
「……そう言われても、詳しくは聞かされてないからなぁ。…でもきっと…帰ってくるよ」
「……」
「だって、水波だもん」
目が合い、何も言えなくなる。
アカネくんは時々、眠たげな目のまま、突き刺すような視線で、あたしを見透かす。
手のひらで思いっきり心臓を掴まれたような、至極、ハッとする瞬間に陥る。
「……そう、です、よね…伊吹ですもんね…」
家族であるあたしが、伊吹を信じないでどうする。
「まあでも……今日は一段と人が少ないから、俺は混乱する気持ちもわかるけどねぇ」
御堂さんが取り繕うように溜息を吐いて、スマホを取り出した。
その微妙にすっきりした表情じゃない所を見ると、この状況にあまり良い予感はしない。
今日の溜まり場には、ぽつぽつと強面さん達がいるだけで、他には誰も見当たらない。
トラくんも急用とかで朝から出かけていて、伊吹は昨日から見ていない。
冬馬さんも翡翠さんも随分見ていないし、コノエくんやリュウくんも…、
それにミクさん、紫さん、それから………、
「やふひはんは、たふんふふお」
「え……?」
「へんはふあった、たふんつってたけど」
スプーンを口に挟んだまま、アカネくんが何かを言っている。
真横に首を傾げていると、「口から出しなさい」と御堂さんがその頭にチョップを入れた。
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