第20話

「後は三國が相手するって。だからオマエら、もう下がっていいよ」




スッと、俺がアイツらの元へ歩く道程が出来る。


まるで機械で作られたようなそれにゾッとした。


先ほどまで、自分よりも数段身体のデカイ相手に囲まれていた息の上がったクソチビが、自分の口端についた血を拭いながら「ミク!!」と俺を見る。




バカ、ふざけんな。先輩に向かって。さん、付けしろっつったろうが。


ぼさぼさだぞ、髪も。はよ帰れよ、マジで。






「何やってんだよ、なんでココにいんだ」



「なんでじゃねーよ!!オマエ、学校やめるってどういうことだよ!!!!」





これは連絡した相手を間違えたな。


物凄い顰めっ面でそれを叫ぶクソチビ…、コノエを見ながら、俺は舌打ちをする。


そして、睨むようにその隣に佇む垂れ目を見た。


珍しく息を上げて、前髪を掻き上げるそいつは、へらりと、いつものように笑った。




「ごめんねー?俺一人で来る予定だったんだけど、状況が状況で…、コノエちゃんもついて来ちゃったのよ~」



「なんで来たんだよ…」



「なんでって、そりゃ、あんな気になる電話の切られ方したらそりゃあ居場所探しちゃうでしょ?」



「どうして場所が…」



「どうしてって、まあ昨日、エテにいたんでね?丁度〝サクラダ〟の居場所、突き止めてたんで…ここかな~って…んま、勘ですな」



「エテって…オマエ…、」




眉根を寄せて訝しげな顔をした俺に、そいつは続ける。




「まあ、それはどーでもいいとして」



「…は、」



「何やってんのミク」



「……」



「一人でなんとかしてやろうって、格好つけてんじゃねーよ?」




にっこり笑って、その瞼を開く。


ゾッとするくらい、いつになく本気な目が、俺を真っ直ぐと見つめている。


その顔は明らかにいつものあいつじゃ、リュウじゃなかった。

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