≪彼らの閲歴 2≫
第18話
▼
人の骨と、肉とがぶつかり合う音がする。
どうしてこうも、人間は不愉快で鈍い音を出すことが出来るのか。
「…んで、なんで来たんだよ。バカだろオマエら」
「ぶっ…!」
「そんなこと言ったって仕方ないじゃん?…俺、オマエのこと嫌いだし…さぁっ!」
「ぐはぁっ…!」
「嫌いなら来るんじゃねェよ」
「っ、どういうっ、こと、だよ…!バカミクっ…!!」
「おいおい、おチビさん!よそ見してんじゃねぇよ!!!」
「っぐ、」
「コノエ!今は集中しろ!」
「っ、うっさいな!わかってるよ!!!」
東沫川(トウマツガワ)にある8番倉庫。
ニシヨミの連中が縄張りとしている西道橋の倉庫と似た、長屋状に倉庫が建ち並んだそこは、久東院と港南の占拠地だ。
人の息遣いと、骨と骨とがぶつかり合う鈍い音が、俺の右耳にはハッキリと聞こえる。
けれど〝左耳〟には、残念ながらその生々しい音が微かにしか聞こえない。
聞こえない。
あの時から、ずっと。
「―――ねえ、三國。あいつら、………何?どうしてここに来たの?」
「……知らねェよ」
バカじゃねェの、バカじゃねェのバカじゃねェの。
多勢に無勢で、勝ち目ないのわかってんだろ。バカじゃねェの。
早く帰れ、帰れよ。
アホ垂れ目、クソチビ、
さっさと帰って、オマエらはオマエらのやるべきことをして来いよ。
「ねえ、三國」
隣から聞こえる声が、黒く歪む。
昔から変わらない、その透き通った、
カ ワ イ ソ ウ ナ コ エ 。
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