≪彼らの閲歴 2≫

第18話









人の骨と、肉とがぶつかり合う音がする。


どうしてこうも、人間は不愉快で鈍い音を出すことが出来るのか。





「…んで、なんで来たんだよ。バカだろオマエら」



「ぶっ…!」



「そんなこと言ったって仕方ないじゃん?…俺、オマエのこと嫌いだし…さぁっ!」



「ぐはぁっ…!」



「嫌いなら来るんじゃねェよ」



「っ、どういうっ、こと、だよ…!バカミクっ…!!」



「おいおい、おチビさん!よそ見してんじゃねぇよ!!!」



「っぐ、」



「コノエ!今は集中しろ!」



「っ、うっさいな!わかってるよ!!!」





東沫川(トウマツガワ)にある8番倉庫。


ニシヨミの連中が縄張りとしている西道橋の倉庫と似た、長屋状に倉庫が建ち並んだそこは、久東院と港南の占拠地だ。


人の息遣いと、骨と骨とがぶつかり合う鈍い音が、俺の右耳にはハッキリと聞こえる。


けれど〝左耳〟には、残念ながらその生々しい音が微かにしか聞こえない。


聞こえない。


あの時から、ずっと。






「―――ねえ、三國。あいつら、………何?どうしてここに来たの?」



「……知らねェよ」



バカじゃねェの、バカじゃねェのバカじゃねェの。


多勢に無勢で、勝ち目ないのわかってんだろ。バカじゃねェの。


早く帰れ、帰れよ。


アホ垂れ目、クソチビ、


さっさと帰って、オマエらはオマエらのやるべきことをして来いよ。









「ねえ、三國」




隣から聞こえる声が、黒く歪む。


昔から変わらない、その透き通った、




カ ワ イ ソ ウ ナ コ エ 。

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