第16話

「だから、もしも、俺なんかに抱き締めてほしくなかったら、いなくなんないでよ」



「そ、そんな……」



「約束」



「………、」



小指を出されて、あたしは何と言っていいかわからなくて瞳を揺らす。


そんなあたしに、トラくんは腰に手を当てながら、





「だってオサゲちゃんがいなくなったら、死んじゃうよ?」



「!!!、しっ!?」



「リュウがね」



なんて笑いながら、あたしの手を取る。



りゅ、リュウくんが…!



「そ、それは困ります……」



「うん。だから約束しよ?」



返事を出来ずにいるあたしの小指に、トラくんが手を繋ぐように小指を絡める。




「……俺は、オサゲちゃんに……小宵ちゃんに、救われたから」



「っ」



「今度は俺が救う番。困ってたら、なんでも言って……とか……言ってみたり…」



少しだけ恥ずかしそうに顔を逸らすその姿を、あたしは嬉しくてたまらない気持ちで見つめる。



じわ、と出てくる涙は、なんの感情を表しているのだろう。


自分で、自分の感情が…全くわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る