第7話聖女様は優しく微笑む

駿が、仕事を辞めて。一週間が経った。「おはようございます。

立川様」いつものように、聖女を名乗る。アサが、駿を

優しく起こす。「おはよう。アサさん」それに答えるように

駿がアサに応える。これもすっかりと定番のやりとりに

なっていた。駿が鬱になってから、アサが一緒に暮らし始めて

一ヶ月が過ぎれば。この二人の関係も少しは変化があるはずなのに・・・・・・。

二人の関係は、そんなに変わっていない。朝は、アサが作った。

朝食を二人で食べてから。一日が始まる。朝食が済むと、アサは

食器を洗い。駿は、リビングのソファーでテレビを見る。

そこからは、アサは主に家事仕事を駿は何もせず。毎日をダラダラと過ごす。

そんな日々を送っている。二人にそれ以上の関係になりようがない。

だから、駿は今日の朝は少し違う。行動を起こす事にした。

「アサさん」「はい。何でしょうか?」いつものように、朝食を二人で

 食べていると。駿が「食べ終わった。食器は、僕が洗いますから」と

 駿が食器洗いを名乗りでた。すると、アサは驚いた表情で

「いえ、私がなりますよ。立川様は、どうぞゆっくりとお休むください」

 アサが、いつものように駿を過ごさせようと促す。駿は、少し黙り。

 大きく息を吸って吐いてから。アサの顔を見つめ。アサに言葉をぶつける。

「それじゃダメなんですよ。アサさん」「はい?」「僕は、この一か月間。

 アサさんに甘えていました」「いえ、そんな事は・・・・・・」アサの瞳が

 大きくなる。「僕は、会社への過度な働き方のせいで。鬱になってしまいました。

 そのせいで、会社を休み。鬱を直そうと思っていた。でも、そんな時に

 アサさんがいきなり現れて、自分の事を聖女と名乗ったり。今でも

 正直信じてはいませんが・・・・・・」「す、すみません」「突然、一緒に

 暮らすと言い始め。僕は戸惑いました。アサさんが本当は何者なのか。探っても

 全然教えてくれませんでした。「それもすみません」駿のこれまでのアサとの

 日々を綴っていた。一緒にテレビを見て大笑いした事。

 アサと脱衣所で鉢合わせした事。アサが掃除中。駿の大切にしていた。

 美少女フィギュアをうっかり落としてしまった事も。この一ヶ月で

 二人は濃い一ヶ月を過ごしていた。「たったの一ヶ月だけど。僕にとっては

 とても充実している。一ヶ月だったです」「立川様・・・・・・」

「だから、これからは僕も家の事をやります。

 まぁ、元々一人やっていたんだけどねぇ・・・・・・」

 「すみませんでした。立川様」アサは、向かいに座る。駿に

 深く頭を下げた。「顔を上げてください。アサさん」アサに

 頭を上げさせると。駿は、もう一度息を深く息を吐きながら

 鼻で一気に息を吸う。そして「だから、今日から、僕も家の事を

 やります。アサさんと一緒に」とアサに自分の気持ちを吐き出した。

 駿の思いを聞いた。アサは、顔を下に向け。しばらく黙ってしまった。

「ア、アサさん?」駿は、心配になり。アサに声をかける。

すると、アサは顔を上げ。駿の顔を見つめ。優しく微笑む。

「わかりました。立川様。食器洗い。よろしくお願いします」と

 駿に言った。駿は少し不安混じりだったけど。「うん。任せてよ」

 アサに応える。駿は、アサの優しい笑顔を見て。心が洗われた。

 気分になった。この自称聖女様との関係性が、いつか恋になるかは。

 もう少し時間がかかりそうである。

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鬱になった。僕に自称聖女が優しく微笑む 優薔薇 @yo-81u

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