第2話 新しい友人たち

直樹が高校生活に少しずつ慣れていく中で、彼は友人たちとの関係を深めていった。放課後、陽菜と拓海と一緒に過ごす時間は、直樹にとってかけがえのないものとなっていた。


ある日、直樹が図書室で勉強していると、陽菜が元気いっぱいに声をかけてきた。


「直樹、今からサッカー部の練習に行くんだけど、一緒に来ない?」


直樹は少し迷った。自分には運動神経があまりないが、陽菜の楽しそうな表情に誘われるように、頷いた。


「まあ、せっかくだから行ってみるか。」


サッカーグラウンドに着くと、部員たちは活気に満ちていて、ボールを追いかけていた。拓海は部員の一人で、彼はすぐに直樹に手を振った。


「直樹、こっちこっち!」


直樹は緊張しながらも拓海の元へ向かう。彼はサッカーの練習を楽しそうにする仲間たちの様子を見ているうちに、少しずつ緊張が解けていった。拓海が直樹にボールを渡し、パスを受けることになった。


「さあ、やってみろ!」


直樹は思い切ってボールを蹴ったが、あさっての方向に飛んでいってしまった。周囲は一瞬静まり返り、次の瞬間、陽菜が大声で笑った。


「直樹、面白い!もっと頑張れ!」


その言葉に、直樹は少し恥ずかしくなりながらも笑顔を返した。陽菜の明るさに支えられ、彼は練習を続けた。徐々に、彼はサッカーの楽しさを知り、少しずつ上達していく。


練習後、疲れた体を引きずりながら帰路につくと、直樹は陽菜と拓海と一緒に話をしながら歩いていた。陽菜がふと真剣な表情になり、直樹に話しかけた。


「ねえ、直樹は将来、何になりたいの?」


その質問に直樹は一瞬戸惑った。自分が外科医として働いていた過去を思い出し、胸が締め付けられるような感覚が広がった。彼は何か言おうとしたが、口を開けられずにいた。


「私は看護師になりたいな。みんなを助けたいから。」


陽菜の言葉が、直樹の心に響いた。彼女の純粋な思いに触れ、直樹は決意を新たにする。「自分も誰かのために何かをしたい」という気持ちが湧き上がる。


「僕も…誰かを助けるために何かしたい。」


直樹は小さく言った。陽菜と拓海は彼の言葉に驚いた様子だったが、すぐに笑顔になった。


「じゃあ、一緒に頑張ろうよ!直樹が助けたい人を、私たちも一緒に助けよう!」


その瞬間、直樹は心の中に温かい感情が広がっていくのを感じた。新しい友人たちと共に過ごすことで、過去の自分と向き合いながらも、新しい未来を切り開いていけるのだと思った。


帰り道、直樹は心に決めた。高校生活を通じて、正義感を持ち続けながら、誰かを助けるために何ができるかを真剣に考えようと。


その日、彼の心に新しい希望の光が差し込んだのだった。

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