【外科医だった俺、過労死したら高校生になった編】
しまざき
第1話 新たな目覚め
目が覚めると、天城直樹(あまぎ なおき)は見知らぬ教室にいた。白い壁、木製の机、そしてどこか懐かしい教室の匂い。周囲を見渡すと、十数人の高校生が自分を取り囲んでいる。彼らは笑ったり、話したり、楽しそうに過ごしていた。
「ここは…どこだ?」
直樹は混乱し、頭を抱えた。自分は外科医として名門病院で働いていたはずだ。毎日、忙しい手術と患者のケアに追われ、寝る間も惜しんで仕事をしていた。しかし、気がつけばこの場所にいる。体は若く、心も若返ったようだが、過去の記憶は鮮明に残っている。
「おい、直樹!早く授業始まるぞ!」
友人らしき少年の声に、直樹は我に返った。彼の名前は拓海(たくみ)と言い、明るい笑顔を浮かべている。周りのクラスメートたちも彼を見て笑っていた。
「え、ああ…そうだな」
直樹は無意識に返事をし、彼らと一緒に教室の前に座った。クラスの先生が入ってくると、教室は静まり返った。先生は何かを話し始めるが、直樹の心は過去の記憶に引きずられていた。
手術室での緊張感、患者の声、家族の涙。全てが彼の心に重くのしかかっていた。直樹は、外科医としての責任感と正義感から、どんな小さな命でも見捨てることはできなかった。「もうあんな生活は終わったはずだ」と自分に言い聞かせるが、胸の奥にある正義感は消えない。
授業が進む中、直樹は少しずつこの新しい環境に慣れていく。周囲のクラスメートたちは彼を特別扱いせず、普通に接してくれる。そんな中で、彼は新しい友人、陽菜(ひな)と出会う。彼女は明るく元気な女の子で、クラスの中心にいるような存在だった。
「直樹って、あんまりしゃべらないね。もっと友達作ろうよ!」
彼女の無邪気な言葉に、直樹は少し心が軽くなった。高校生として新しい友人を作ることができるかもしれない。過去の自分と決別するチャンスだ。
放課後、直樹は陽菜と拓海と一緒に帰ることになった。彼らの話を聞きながら、直樹は新たな青春を感じる。途中、道で困っている小犬を見つけると、直樹の正義感がむくむくと湧き上がった。
「待って、あの犬、どこかに行っちゃうよ!」
直樹は立ち止まり、急いで小犬のもとへ駆け寄った。彼の行動を見て驚く陽菜と拓海だったが、直樹は小犬を抱き上げ、優しく撫でた。「君も助けが必要だよね」と心の中で語りかける。彼は小犬を助けることが自分の役目だと感じた。
その瞬間、直樹はこの新しい生活でも誰かを助けることができると確信した。正義感に突き動かされ、過去の経験を生かして新しい自分を見つける旅が始まる。
だが、心のどこかで過去の影が薄暗く彼を包み込んでいることは、どうしても否定できなかった。
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