第3話「お前も、一人で特訓してたのか」
アカデミー・ルミエールの裏庭には、古い魔法の練習場があった。苔生した石造りの円形競技場は、かつての栄光を偲ばせるような風格を漂わせている。壁には古代の魔法文字が刻まれ、かすかに光を放っていた。月明かりの下、その練習場に二つの影が忍び込んだ。
エリオット(エロイーズ)は、誰もいないと思っていた練習場に足を踏み入れた瞬間、愕然とした。そこには、既にルーシー(ルシアン)がいたのだ。ルーシーの周りには、雷の精霊たちが小さな光の粒となって舞っていた。
「お前……何でここにいるんだ?」
エリオットの声に、ルーシーは驚いて振り向いた。
「それはこっちのセリフよ。ここは私の秘密の特訓場所なの」
二人は互いを睨み合った。しかし、その目には敵意だけでなく、好奇心も混じっていた。月光の下、二人の姿はどこか本来の性別を感じさせるものがあった。
「お前も、一人で特訓してたのか?」
エリオットの言葉に、ルーシーは少し表情を和らげた。
「ええ、そうよ。クラスメイトに見られたくない魔法があってね」
ルーシーの言葉に、エリオットは思わず興味を示した。彼女の心の中で、自分と同じような秘密を抱えているのではないかという期待が芽生えた。
「見られたくない魔法? それって……」
言葉を途中で止めたエリオットを、ルーシーは不思議そうに見た。
「あなたは? あなたはなぜここで特訓しているの?」
エリオットは一瞬言葉に詰まったが、すぐに取り繕った。
「別に。ただ、人目を気にせず練習したいだけだ」
二人は沈黙の中、お互いを観察し合った。その時、エリオットの心の中で何かが動いた。
(この女、何か隠しているな……でも、それは俺……私も同じか)
ルーシーも同じように考えていた。
(彼、何か秘密があるわ。私と同じように……)
月明かりの下、二人は互いの存在を意識しながら、それぞれの魔法の練習を始めた。時折、互いの魔法の輝きに目を奪われながら。エリオットの風の魔法とルーシーの雷の魔法が、時に美しく交錯する。その瞬間、二人の心に不思議な高揚感が生まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます