第2話(あんないけ好かない女に負けるなんて……)
アカデミー・ルミエールの教室は、まるで宝石箱のようだった。壁一面に並ぶ本棚には、虹色に輝く魔法の書が並び、天井からは星屑のような魔法の光が降り注いでいる。窓の外には、浮遊する小島に築かれた庭園が見え、そこでは珍しい魔法植物が色鮮やかに咲き誇っていた。
エリオット(エロイーズ)は、風属性の魔法を得意としていたが、他の属性の魔法には苦戦していた。特に、水属性の魔法は彼女にとって大きな壁だった。水の魔法は、しなやかさと柔軟性を要求する。それは、男装をしている彼女にとって、最も苦手とする要素だった。
「エリオット君、もう一度やってみなさい」
プロフェッサー・アメリー・ルーンクラフトの声に、エリオットは緊張した面持ちで杖を構えた。教授の杖からは、かすかに虹色の光が漏れており、その存在感は圧倒的だった。
「水よ、私の意志に従え……」
エリオットの杖から青い光が放たれたが、すぐに消えてしまう。彼女は肩を落とした。
(くそっ、なぜできないんだ? 男の姿でいるせいか? それとも……)
ルーシー(ルシアン)は、そんなエリオットの姿を冷ややかな目で見ていた。しかし、彼の心の中では複雑な感情が渦巻いていた。
(あの子、本当に魔法が下手ね。でも……なぜか必死に頑張っている姿は、少し眩しく見えるわ)
「ルーシーさん、あなたはどうですか?」
教授の声に、ルーシーは我に返った。
「はい、やってみます」
ルーシーは優雅に杖を振り、完璧な水の球を作り出した。水球の中には、小さな魚の形をした水の精霊が泳いでいる。クラスメイトたちから驚嘆の声と拍手が沸き起こる。
エリオットは、その様子を見て歯噛みした。
(あんないけ好かない女に負けるなんて……)
放課後、エリオットは一人で特訓を続けていた。教室の隅で、何度も失敗を繰り返す中で、彼女の心に不安が芽生え始めていた。窓の外では、夕暮れの空が魔法の光に染まり、幻想的な風景を作り出していた。
「魔法って、本当に難しい……」
独り言を呟いた瞬間、背後から声がした。
「ふん、当たり前でしょ」
振り返ると、そこにはルーシーが立っていた。彼女の周りには、かすかに雷の粒子が舞っており、その姿は妖艶さすら感じさせた。二人は互いを見つめ、空気が張り詰める。
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