World26 クリスタル・ベアが強敵ってマジっすか!?

俺は心配するミラやメイナを置いて、ルウォーリ北部にある大きな山にやってきた。

2人がいなければ正直飛んだりできてやりたい放題なので、自由だ。


「うわ……!」


岩肌がもろに出た、威圧感のある山。ここにクリスタル・ベアは生息しているらしい。事前に聞いた情報によると、魔力耐性が高くあまり魔法攻撃が通用しないとのこと。

だがしかし。

原初魔法ならそんなの関係なく攻撃が通るとのことだ。ギルドの受付嬢は冗談のつもりで言ったんだろうが、俺ならそれができる。


魔力探知でクリスタル・ベアターゲットがいる場所は分かっているので、俺はそこをめがけて、まっすぐに飛び立った。


ここには誰もいないから風魔法も使いたい放題だ。ロジェにやり方を教わっておいて本当によかった。


魔法防壁マジックシールド】を張りながら飛んでいるが、なかなかの轟音だ。ちゃんと防壁を張っておかなかったら俺の顔は変形し鼓膜は破れているだろう。これ、時速何キロくらい出てるんだろうな。


下を見ると、クリスタル・ベアが何体か見えた。流石に最初から複数体を相手取るのは気が引けるので、群れから外れた個体を狙おう。


「【氷獄陣コキュートス】!」


原初魔法の!ネーミングセンス!!無さ過ぎか!?

一撃で、頭に水晶をつけた巨大なクマが氷漬けになった。


飛行魔法の勢いを緩め、氷漬けになったクマの横に降り立つと、周辺までしっかり凍りついていた。

ちゃんとミラに言われた通り範囲指定していたはずなんだが、ミスったのか?降り立った地面が凍ってパリパリになってしまった。


「やっちゃった……?」


そうぼやくと、息が真っ白になってしまった。幸いあまり広範囲ではないようだが、このあたりはかなり気温が下がってしまった。


「くちゅん」


……くしゃみまで出てしまった。しかし、前世ではこんなくしゃみはしなかったのに……。メイナとミラに見られたら、絶対かわいいなんて言われるんだろうな。


「グオオ……」


森中に響き渡る、クマの鳴き声。


「……うわっ!?」


その後すぐに地鳴りがして、巨大な影がこっちに近づいてくる。近くにいた、クリスタル・ベアの群れがこっちに向かってくるようだ。


……まあ、さっきと同じように凍らせたらいいか。


メキメキと木がクリスタル・ベアによって薙ぎ倒され、折れていく。環境破壊もいいところだ。


「グアーッ!!」


「コキュー……」

『管理者権限:セヴェトからの警告。この規模で魔法を行使すると世界内の生態系が著しく損なわれます』


見知らぬ女性からの声。だが、内容を考えると無視するわけにはいかない。俺が考えている、森一帯の凍結範囲で生態系が損なわれる、だって?


「俺は……どうすればいい?」

『広範囲ではなく、小規模魔法を複数展開することを推奨』

「あー……」


なんでいきなり管理者権限が起動したのかは分からない。しかし、あの眼鏡がつけてくれた権限だ。助言には素直に従うのがいいだろう。


俺は【氷獄陣コキュートス】を6つ展開し、クリスタル・ベアを迎え撃った。




倒れたクリスタル・ベアの討伐証明部位、頭をカットして、俺はギルドから渡されたマジックバッグに収納した。

残りの胴体はギルドからはバッグに入らないのでいらないと言われているが、俺が個人的に持ってはいけないと言われてはいない。

神の権限、【無限収納】で保管しておこう。食糧難にあったらこれを焼いて食えばいい。


さて、魔力探知ではもうクリスタル・ベアはいないみたいだし帰りたいが、あんまり早く帰ると怪しまれる。このクリスタル・ベアの肉、さっそく焼いて食ってしまおうか。


今日は野宿だ。

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