World24 職人に認められたってマジっすか!?

「ここがガビの武器屋。この街で1番良い武器屋だよ。ロジェの剣もここで用意してくれてるんだ」


 路地裏の奥の奥にある小さな店。そこからは熱気が伝わってくる。


「ガビ。入るよ」


 扉を開けると、小さなオッサンが火花を散らし、剣を打っていた。


「よく来たな、ミコ。ロジェの武器以外のためにお前がここに来るなんてな」

「まあ、武器を見繕ってほしい子がいてね」

「そこの坊やか」

「うん。今はEランクだけど、将来有望だよ」


 ガビは手を止める気配がない。そのまま話を続けている。


「だろうな。只者じゃねえ」

「分かるかい。この子、本職は魔法使いだけど、身体能力も高いんだ」

「ああ。隣の部屋に武器がたくさんある。とりあえず見ていけ」




 ガビに言われるまま、俺達は隣の部屋に入った。


「うわあ……!」


 キラキラと光る剣たちは、どれも俺の目を惹きつけた。


「これ、全部ガビさんが打ったの?」

「そうみたい。いやあ、あるかな。ソウタくんに合う武器が」


 その中でも俺の目を惹いたのが、蒼く輝く長剣だった。


「それはちょっとガキには重いんじゃねえかな?」

「露骨に不満そうな顔をしない、ソウタくん」


 だって持ってみたいんだもん。こんなロマンの塊みたいな剣、手に取らなきゃ損だ。


「私が取ってあげる!」


 メイナが蒼剣を持ち上げ、俺に渡してくれた。


「はい、ソウタ」


 手に持つと、たしかに感覚重めだ。だけど持てないわけじゃない。まあ、振り回すには不向きだが。


「ソウタがこんな楽しそうな顔してるの、初めて見た」

「ガキにはこれがいいんじゃね?」


 それはメイナの剣よりは長く、ロジェの剣よりは短いもの。俺の体躯を考えたら、使いやすい長さと重さだ。だけど。


「シンプル……」


 包丁かよ、ってくらい地味。これなら近所の刃物店に売ってそうだ。


「ガキにはこれくらいがちょうどいいんだよ」


 メイナ、睨まないで。実用性が大切、というのは事実だから。




 しばらくして、ガビがこっちの部屋に入ってきた。


「どういうのが好みだ?」

「あの、この蒼剣のデザインでこの長さにできますか?」

「ほう、たしかにこの蒼剣は魔力を込めるのに向いている。長さならお前の体躯に適してるだろう。分かった、すぐに打つから明日また来い」

「……はい!ありがとうございます!」




「これが頼まれてた武器だ」


 次の日、ガビが俺に手渡した武器は、たしかに注文通りの蒼い短剣だった。光り輝くそれは、これから俺の相棒となるのだ。


「ありがとうございます!お代は……」

「出世払いでいい。デザインは既存のものを使ってるし、そんなに高くはない」

「本当に世話になるね、ガビ」

「ミコの頼みだ。それに、コイツはいい冒険者になる。伸びしろがありそうだ」


 そう言ってもらえるなんて光栄だ。ガビはきっとたくさんの冒険者を見てきただろうし、実際この武器も業物わざものだ。神の権能の一つ、神眼にもそう書いてあった。


「だってさ、ソウタ。やっぱりソウタはいろんな人に認められてるね!」

「嬉しいね……」


 これで弱かったら、神の威厳的にまずいよな……。よかったよ、ほんと。

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