World21 錬金術師がいるってマジっすか!?

俺達はミコの家を出ると、冒険者ギルドに向かった。


ここは比較的女性の冒険者も多い。……なぜか、露出の多い装備を着ているけど。

数はやっぱり少ないな。アルバリアは冒険者都市っていうだけあるんだな、やっぱり。


「依頼を何か受けないと」

「もうお金ないよ」


メイナが少ししか硬貨が入っていない袋を揺らして言った。今の俺達の所持金は今日の宿屋代くらいしかない。


「でも依頼は……」


掲示板に貼られている依頼は、どれも人数指定があって俺達には受けられないものばかりだ。

一つだけあるのが……


「Fランクの討伐依頼……」


正直こんな依頼じゃ明日の宿屋分にしかならない。それに、Dランクのメイナ、ミラ、Eランクの俺じゃFランクの依頼なんて受けても大した実績に入らない。


「どうする、受ける……?」


ミラが迷っていると、大騒ぎする声が聞こえた。


「冒険者なんていなくとも僕がお守りします!」

「万一の危機に備えて何が悪い、いいからその手を離すんだ!」


受付の前でぎゃあぎゃあと男と揉める女の子。彼女の姿には見覚えがあった。


「……ミコ?」

「あ、ソウタくん!ちょうどよかった!」


重そうなローブを着たミコは、俺の顔を見るなりそう言って駆け寄ってきた。


「この依頼、君たち3人に受けてほしいんだけど!」


依頼の紙を俺に手渡したミコは、満足そうに笑っていた。


「……薬草採取の護衛依頼?」

「そう。私実は、錬金術師なんだよね」

「錬金術師!?」


声を上げたのはミラだった。珍しい、ミラがこんなに大声を出すなんて。


「すごい……!」

「錬金術師って、あれだよね?鍋でいろいろ作る」

「そうそう」


そしてミコの横にいる男が俺を睨む。くそ、若いイケメンが!


「……師匠、こちらは?」

「昨日出会ったソウタくん、メイナちゃん、ミラちゃんだ。3人とも冒険者だよ」

「こんなガキが!?」


おいおいガキとは失礼だな。お前もまだ18とかだろ。


「ソウタくんはロジェよりも魔力量が多い。たしかに歳は14だけど、冒険者としては充分申し分ない」


露骨に舌打ちするロジェ。目の前で普通そんな態度取るかよ。ガキなのはお前じゃねえか。


「……で、ソウタとやら」

「はい」

「まさか師匠の依頼を受けないとは言わないだろうな?これだけ師匠に評価されておいて!」


どっちなんだよお前はよ。俺に護衛させたくないんじゃないのか。


「受けるよ、もちろん!」


そしてメイナ。勝手に決めないで。俺はできればこのロジェとかいう口うるさいイケメンとあんまり関わりたくない。


「よかった、受けてくれて。じゃあ早速、行こうか」


ミコが笑うので、俺にはもうきっと拒否権はないんだろう。

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