World13 教会の人間が来たってマジっすか!?

「ソウタ、原初魔法を使ってるし白金級魔法を使えたことには突っ込まない。でも、こんなに広範囲に魔法の影響を及ぼせるなんておかしい」

「え」


これって元々そういう魔法じゃないの?っていうか、なんでそんなことがミラに分かるんだ?


「どういうこと?ミラ」

「今魔力探知をしたけど……この川まるまる凍ってる。上流から下流まで、完璧に」

「そんなに強い魔法をソウタは使ったの?」

「違う。白金級魔法でもそこまでの広い発動範囲はない」

「じゃあ……」

「ソウタのことは原初魔法を使ってたときから変に思ってた。いくらなんでもあんなに広範囲に魔法を使えるなんて」


ミラは俺に深刻な顔で尋ねた。


「ソウタって、魔法を使うとき発動範囲設定してないよね?」

「……え?してない、けど……」


必要なのそれ?結構適当にやってたけど。


「普通は必要なの。というか、それなしで魔法が発動するほうがおかしい」

「そうなんだ……」

「ソウタは強いけど、制御を覚えたほうがいい」

「はい……」


そうして、俺達は報告をしにギルドに戻った。




ギルドの扉の向こうから、男が怒鳴る声が聞こえた。


「ソウタとやらを早く出せ!」

「ソウタさんは今Eランクの依頼に向かっているのでいません……」

「じゃあ帰ってくるまでここで待たせてもらう!」


……なんだ?俺に客人か?ちょっと柄が悪そうだから帰ってほしいんだけど。


「どうしたのソウタ?」


そう言ってメイナが扉を開けた。今名前を出されるのは絶対不味いんだけど。


「ソウタ……だと?」


ほらあ!?絶対面倒くさいことになるじゃん?


ギルドの受付の前であぐらをかいて座る男。白い装束を着て、聖職者のような雰囲気だ。だけどヒゲは生えているし、タバコでも吸ってそうな見た目だ。


「お前がソウタか」

「えーと……はい」


こんなオッサンに凄まれる機会、37歳だった俺でも中々ない。彼は俺を値踏みするように見つめ、それから臭い息を吐いて言った。


「へえ、ちょっとデカめのガキか。生意気そうなツラだなあ。これが神の子ねえ?」


顔が近い。俺と同じくらいのオッサンにそんな顔近づけられてもちっとも嬉しくねえんだけど。


「なに、アンタ」


メイナが今にも手を出しそうな様子でオッサンを睨む。ミラも杖を構え、一触即発と言っても過言ではない。


「二人ともやめて。俺に何の用ですか?」

「お前を神の子として認定しに来たんだよ」


とてもじゃないけどそんな風には見えない。その格好じゃなかったら喧嘩を売りに来たと勘違いしていた。


「神の子に認定して……どうするんですか」

「教会で管理下に置いて、教育するんだよ。冒険者登録もしたばっかりらしいしな」

「まあ……そうですけど」


今の説明で神の子になりたいとは思えない。つまり、教会に首輪をつけられるってことだろ?神が教会に縛られるなんてごめんだ。


「俺はそれを望みません」

「へえ。お前がそれでいいなら、いいや」

「……え?」


てっきり無理矢理にでも連れて行かれるものかと。


「こっちだって忙しいんだよ。神の子がこれ以上増えたら困る。子どものお守りとか絶対俺は嫌だし」

「はあ……」

「一応決まりだから来ただけ。じゃあな」


手を振りながら去っていくオッサン。立ち止まって言った。


「俺の名前はカリム。もし神の子になりたくなったらいつでも来い。教会はお前を歓迎する」

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