World11 無詠唱が神業ってマジっすか!?

「【穿氷撃アイシクル・スピン】!」


巨大な氷柱つららで青毛の狼の腹を貫くミラ。


「やあっ、はあっ!」


凄まじい速度で狼を切り裂くメイナ。

これが、Dランク。


この二人でそれならAランクはどうなってしまうんだ。もう目視で追うことも不可能なんじゃないか?


「どう?私たちの実力」

「すごい……!」


俺は素直に手を叩いて二人を褒めていた。


「メイナ!」


ミラが叫ぶ。メイナの後ろには、倒しきれていなかったのか狼がいた。


まずい。このままじゃ……!


そう思った瞬間体が勝手に動いて、俺の手から出た氷柱が狼を貫いていた。


「……え?」

「よかった……!」


今、本当に危なかった。

、目の前で恩人を失うところだった。


「メイナ、大丈夫?」

「うん、それより……」


メイナが言おうとしたとき、ミラが怖い顔で立っていた。


「今の……何?」

「ああ、ミラの魔法を見て、真似てみたんだ。成功するかは賭けだったけど……」


俺は一応この世界に存在する全ての魔法を使えるらしい。しかし普通の人からしたら、異常なことだろう。


「違う。無詠唱で、しかも媒介なしで魔法を使えるなんて……神の子どころじゃない。神話に出てくるニーナ様と同じ力」


……俺、もしかしてとんでもないことやっちゃった?


「ソウタって……何者なの?」


正体がバレそう(二回目)。今回こそ本当に不味いかもしれない。


「何者……か」


こうなったら必殺技だ。俺は俯いて、声を震わせた。


「分からないよっ……。気づいたらあの森にいて、よくわからない魔法を使えて。俺だって、どうしたらいいか分かんない……」


秘技、嘘泣き。子供であるからこそ通用するものだ。これでバレたら、逃げるしかあるまい。


「あー!よしよしソウタ。怖くないよ。ごめんね」

「……分からないなら仕方ない。ごめん」


メイナが俺を抱きしめてくれた。そんなに心配されると、逆に罪悪感が湧いてしまう。

ミラも頭撫でないで。本当に泣いちゃうから。


「これで討伐数達成かな?」


今回の依頼では20体の討伐らしい。しかし30体くらいが一度に出てきたので倒してしまった。絶滅するのもそれはそれで問題らしいので、あまり多く倒しすぎてはいけないらしい。


「うん、帰ろう」


ギルドに報告に行くと、男たちはまたざわついていた。


「あれが噂の?」

「まだ確定じゃないらしいけど……」


俺が神の子だとメイナが言ったせいで、ギルドで注目の対象になってしまった。


「あのー、メイナさん。ミラさん。僕、先帰ってましょうか?」

「だめ。ちゃんとギルドに報告しないと」


この間と同じ受付嬢が出てきて、僕達に尋ねる。


「もう依頼が終わったんですか?」

「うん。一体はソウタが倒したの」

「……そうなんですか?Eランクの魔物をGランクのソウタさんが?」

「そう。穿氷撃アイシクル・スピンでね」


ギルドには、報告の真偽を見抜く魔道具がある。嘘を吐くとその魔道具のベルが鳴るらしい。


「……森を焼き払ったのもソウタさんですし、驚きませんけど。実績には入れられませんからね?」

「えー」


メイナとミラが不満げにするが、仕方ない。俺はこの依頼を受けてないから。


「ソウタさんのランクを上げたいなら……パーティーを組むことをおすすめします」

「……え?」

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