遊園地のおともだちたち
高坂 美月
第1話
心が疲れて、もうすべてどうでも良いと思ってしまった。
そんなとき、私は気づけば遊園地に迷い込んでいたのだ。
ここ、どこだ?
そう思ったとき、学校の制服のようなものを着た男女2名が遊園地の入り口で出迎えてくれる。
男の子は短髪の黒髪で、前髪をセンター分けにしていた。
白いシャツにチェック柄のネクタイ、ハーフパンツ姿だ。
女の子は前髪なしの金髪で、顎くらいの長さのボブヘアだ。
女の子も白いシャツにネクタイ、ベージュのスカートを身につけている。
「ここは悩める人のための遊園地なんだ」
男の子の方がそう言って、私の手を引いて案内した。
女の子もついていく。
「どのアトラクションに乗ってもいいし、アイスとかも食べていいよ。お土産も好きなの買っていってね」
女の子は私の頭にカチューシャを乗せながら言う。
館内を歩き回り、私が「ジェットコースターに乗りたい!」と言うと、2人は了承してくれた。
ジェットコースターに乗ると、一切の悩み事がなくなったような気分でスッキリした。
その後は男の子が「来てくれたお礼にアイス奢るよ」とのことだったので、3人でアイスを食べる。
男の子はチョコアイス、女の子はいちごアイス、私は抹茶アイスにした。
「……なんでここまでしてくれるの?」
私が訊くと、男の子は
「君が悩んでて辛そうだから元気になってもらおうと思って」
と微笑む。
私はアイスを食べながら考え事をしていた。
ーーこのまま楽しい時間が続けばいいのに。
ーー今だけは悩み事も忘れられるのに。
「どうしたの? 大丈夫?」
女の子に声をかけられ、私は我に返る。
「あ、ごめんね、なんでもない」
私が言うと、女の子は「なら良いけど……」と言った。
それから私たちはいろいろな乗り物に乗る。
メリーゴーランド、観覧車、空中ブランコなど。
3人で写真も撮り、このまま時間が止まれば良いのになんて思ったりもした。
気づくと空が暗くなっており、2人とお別れする時間が近づいてきた。
明日からまた悩みだらけの世界に戻らなければならないと思うと、涙が止まらなくなる。
私が泣いていると男の子は背中をさすってくれ、女の子はティッシュをくれた。
「大丈夫。悩み事なんてずっと続くものじゃないから。また辛くなったらここに遊びに来たらいいよ」
男の子が言うと、女の子も
「そうよ、私たちがいるし1人じゃないから。ここに手紙書いてくれたら返事するし」
と言って連絡先を書いた紙を渡してくれる。
ベンチで話をした後、少しして男の子がお土産にうさぎの風船をくれた。
こうして私は2人とお別れし、家に帰る。
遊園地のおともだちたち 高坂 美月 @a-tmm1209
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます