第4話 下呂温泉

 ふもとの茶店に着くと、双葉たちを見かけたケロが何やら嬉しそうだ。


人嫌いな癖に寂しがり屋か。面倒臭い奴だな。

 双葉と十三は二人共小柄な方だったので、二人同時に乗っても問題なさそうだ。


「美濃の国にある隠し蔵元を見つけて、特級酒を買う仕事ができなければ、鉄砲も買えませぬ。なんとしてもやり遂げようぞ。東郷殿。」


「念願の鉄砲を手に入れるためなら美濃の国中を探し回る所存。」


 街道沿いの整備された道なら飛ぶような速さで駆け抜けるケロに、十三は凄い馬だなと素直に感心した。


 ほどなく井ノ口の町に着いた。まずは座に。

座の主人に証明札を見せて、茶と茜を全て買い取ってもらったら予想以上の利益が出た。

 そう言えば、隠し蔵元の情報があるかもしれぬといってたな。聞いてみるか。


「あそこは造った分を売りに来るので誰も場所を知らないんだ。後をつけた者がいたが、足が滅法速くてすぐにまかれるらしい。なんでも長良川の方らしいが、それ以上の事はわからないが。」


「それで十分、感謝いたす。」やはり長良川だな。双葉は、半ば確信めいたものを感じた。


「東郷殿、今から山に入ると日が暮れるし、探索は明朝一番からで。」


 「心得ました、今日はこれからいかように?」


 「少し足を延ばせば、下呂温泉があるので湯につかり英気を養いましょう。」


 「それはいい!サービスシーンてことだな。」


 「?」


 温泉の脱衣所で着物を脱ぎはじめ、十三は胸に巻いていたさらしをほどくと

立派な乳房がこぼれた。

 

 一方双葉は、ささやかで。


何のことはない、二人とも男装の女武者だった。


 「拙者、実は《じゅうぞう》ではなく《とみ》と申す。

今の時代は男の方が何かにつけてやりやすいのでな。」


 「同感でござる。」


 温泉近くで宿を取りたらふく晩飯を食べた。鮎の塩焼きが絶品だった。


 爪楊枝を口に双葉はケロのいる厩舎に行った。

あらためてよく見れば、とても若駒とは思えない立派な馬格である。


 湯桶に入れた熱い湯で身体を拭いてやると、目を閉じてじっとしている。

「今日はよく働いてくれたな。明日からも頼むよ、相棒。」

「ブヒン」


 双葉は、出会ったこの日から別れの日まで、朝晩ケロの世話をほとんど欠かさなかった。


 部屋に戻ると既に十三は高いびき。寝相が悪いなんてもんじゃないぞ。

寝巻がほとんどはだけている。


 やはり初日はサービスシーンが多くないとな。


上方に来てたった一日でいろんなことがあったが。

 

 時は戦国、嵐の時代の一日が終わる。


これでまた一歩野望に近づいた!




 十三は夜明けと共に飛び起きた。

ほとんど半裸である。

 十三の登場でサービスシーンは安泰だな。


 本来ならPVを伸ばすために第一話から出したかったのだが、双葉では無理だったし。


 おい!それがしでは無理ってどうゆうこったい?。

貴様、殺すリストに載せてもらいたいようだな。

 それがしだって本気出せば、、、


おいおい、冗談はマオマオ並みの胸だけにしとけよ。

 その胸でどうやって本気がだせるのだい?。


 双葉は目が覚めた。

なんか、変な夢を見ていたような気がする。

 寝ている間に暴れたらしく、双葉の寝巻もはだけていたが

サービスシーンとは認定されなかった。


 なんだよ、その認定とは。誰がするんだ!

 

まだ寝ぼけているようだ。


 二人とも寝ぼけつつ、運ばれてきた朝飯の膳を3人前ずつ平らげて腹八分めにしておこうとか。

 

 弁当の握り飯と竹筒のお茶を頼んでおいて、旅支度をした。


 長良川の中流から上流に狙いを定めて、二手に分かれて探すことにした。


川の東側は馬でも進めそうなので双葉が、西側は十三が探す。


 ときおり十三から合図の指笛が聞こえる。

双葉は吹けないので柏手を打って応える。

 

 手がかりがあれば2回続ける段取りだ。


 朝から探し始めてかなりの時間がたっている。

お日様の位置からそろそろ昼ごろか。


 河原に降りて手と顔を洗い弁当の握り飯を食べることにした。


 ケロにも水を飲ませてやらないとな。


 大きめの握り飯4個のうち2個を食べ、少し考えてから包みなおした。

まだ先は長いし残しておこう。


 ケロで行けるところはもうあまりないな。

どこかで預けられたらいいのだが。


 む、風上から木を燃やすような匂いがする。

炭焼き小屋があるのでは。

 匂いのする方へ進んで行くと確かに炭焼き小屋があった。

火を使ってるのだから人がいるはず。


 小屋に近づいて行くと小屋の裏に人の気配。

裏に廻って様子を見ると薪を割ってるようだが。

 ほとんど音がしない。

達人の域だな、このようなところにも逸材がいるとは。


「失礼つかまつる。すこしお尋ねしたい。」


「客人とは珍しい、何でも聞いてください。」


「隠し蔵元を探しているのですが、これより先は馬では進めそうになくて難儀しておりまする。謝礼はしますのでしばらく馬を預かってもらえませぬか。」


「隠し蔵元ならうちに炭薪の注文が入るのでよく届けにいきますが。」


「なんとそれは僥倖! それがしたちを案内してもらえませぬか。」


「見たところ、悪い人じゃなさそうだからいいですよ。」


「かたじけない。」

 後ろに向かって柏手を2度たたくと返事の指笛が聞こえた。

おっつけ十三もくるだろう。


「貴殿はさぞかし長い間、ここで炭焼きを?」


「生まれてこの方18年間ずっとです。」


「これから先もずっと?」


「他にやることもなければ、如何とも。

それに武士になれば戦で人を殺めなければならぬのが嫌です。」


「その気持ちよくわかります。しかし殺さずとも戦いに勝てるならいかが?」


「そんなことができるのでしょうか?

できるのならここを出て、広い世界を見てみたい気もする。」


「できますとも!我らが目指すは戦のない太平の世。

家臣ではなく同志として力を貸してはいただけませぬか?」


「承知しました。話を聞いた以上断ればこの先きっと後悔すると思われますゆえ。」


「有り難い。それがしは東風双葉と申します。」


「拙者は東郷十三じゃ、良しなに。」

いつの間にか到着していた。

(素早いな、さすがは女ゴルゴ)


「薬袋勘三、よろしくお頼み申します。」


 同志であり、生涯の忠犬、、、じゃなくて忠臣との出会いだった。











 


 




 


 














 
















 






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