第24話・人類を守るってことにゃ!

「と、いうわけで三つめだ」


 最初から結論ありきの考察だったけど、一つめ二つめは“選択しないように”と理論的に示したかったのだろう。


「このまま素顔を隠して、転移してくる異世界人をプチプチとつぶす」


「結局それしかないのかー」

「ま、根本的な解決策が見つかるまではしかたないやろな」


 正直言うと『面倒だな~』としか思わなかった。


 でもこのあと、置かれた現状をあらためて認識した時、私の中でフワッとしていたものが確信に変わったんだ。


「重要なのは、異世界人の存在が世間にバレたとしても、身柄を拘束されなければ誤魔化ごまかしが効くってことだ」


「逆にいうとや、異世界人が捕まるのは最悪やで。もともとは地球人やからな、調べられて“過去に死んだ人間”とわかったら世間は混乱必至や」


 テレビや動画で拡散されたら、遺族が名乗りでてもおかしくないし、そうなったらDNA鑑定されるかもしれない。


 葬式をして、目の前で火葬までしているのに何故生きているのか? と、マスコミが飛びついて大騒ぎ確定だ。


 そうなると、黄泉がえりJKの存在が“都市伝説レベルから芸能人スキャンダルレベルに昇格”してしまう。


「僕の学校を襲った魔術師も、そういう理由で逃がしたんですね」

「そうや。それに嬢ちゃんたちの命もかかっているからな。もちろんショタ坊も危険なんやで」


「大丈夫、タケルは私が守るから!」

「アカリちゃんは僕が幸せにするから!」


 ……どさくさ紛れにこの子ってばもう。


 いろいろとごちゃごちゃしてきたな~と思っていたら、クミコがここまでの内容を箇条書きにしてまとめてくれていた。


 ……なんかもう、さすがすぎて頭が上がらない。


――――――――――――――――――――――――――――


 ①アカリんが完全に黄泉がえるためには、おいもの魔法(身体)が必要。


 ②異世界人は殺しても警察に捕まえさせてもダメ。とにかく追い返すこと。


 ③アカリんが(一時的に)おいもの魔力で黄泉がえっていることや、ウチたちの魔力のことがバレると国家レベルでヤバイ。


 ④上記すべてをクリアするために、襲われる地球人を守らなければならない。


――――――――――――――――――――――――――――


「なんか制約が多いな~」

「ま、仕方ないよ。やれるだけやらないとアカリんが死ぬだけだもん」


「あ……これってさ」


 その時、メモを見ていたレナが彼女流に解釈した鋭いひと言を発した。



「……なるほど、大分端折はしょっているけど、最終的にはそういう図式になるね」


 と、感心するクミコ。


「正体を隠して戦う変身ヒーローみたいなものにゃよ」


 ……うん、さすがにそれは無理があると思う。


 おいもさんの身体探しのはずが、なんだか大変なことになってしまった。死体探しだけならまだしも、この先もあんな連中と戦わなきゃならないのか。





 ――翌日。


「おはよー」

「久しぶりー」


 そんな言葉が聞こえてくる一週間ぶりの学校だ。


「結局、一回しか見つけられなかったね」

「そもそも、生まれながらに魔力を持った人間なんてほとんどいないんだからさ」


 楽観的になり過ぎていたのかもしれないけど、正直言うと、こんなに難航するとは思っていなかった。


「良し悪しは別として、魔力持ちを見つけて死ぬのを待った方が確実なのかもね」

「例えば、異世界人に襲わている人を助けないで死んでもらうとかにゃ?」

「それも一つの手段ってこと」


 お巡りさ~ん、朝から怖い相談をしているJKはここです。 


「でも、さすがにそれは抵抗があるな」

「そうは言うけどさ……。まったく縁のない他人を見捨ててアカリんが助かるのなら、ウチはそっちの方を選ぶな」


「気持ちはものすごくありがたいけど、助けられる命を見捨てて自分が生きるってのは、さすがにあと味が悪すぎるよ」


「ま、あーしはアカリが選ぶ方を応援するかにゃ~」

「私としてはその方が助かるな……」


「うにゃ⁉」


 その時、なにかに驚いたかのような反応をしたレナは、急に立ち上がると廊下の方を見て動かなくなった。



 ♪キーンコーンカーンコーン……



「ようし、席につけ~」


 と一週間ぶりに聞くかどセンのいつものセリフ。そしてシーンとなる出席とり。


姉小路あねがこうじレナ」


 レナは立ったままで、角センの声に無反応だった。いったい、なにに気を取られているのだろうか? 


「おーい、姉小路。」

「……」


「こら、ねがこうじ!」

「あ……はいはい、はい! あーしあーし、姉小路レナちゃん!」

「わかってるから普通に返事しろ。次、遠藤……」


 レナは、ストンっとイスに座ると『ふう……』と緊張をといていた。 


「レナ、どしたの?」

「これは……ヤバイにゃ」

「うん。かなり、ね」


 とレナの言動を理解しているクミコ。


「え……ちょとなんで二人だけ納得しているのさ。私にも教えてよ」


 クミコは口に人差し指をあてて、口を閉じるようにとジェスチャーしてきた。そして……


「先生!」


 と、出席をとってる途中にも関わらず手を上げた。


「どうした、宝生」

「今日、転校生っていますか?」

「はあ?」

「もしくは臨時の教師とか」

「ん~、いや、この学年にはいないが……なんかあったのか?」

「いえ、それなら大丈夫です」

「お、おう、そうか。なら出席を続けるぞ~」


 ……クミコといいレナといい、いったいどうしたのだろうか?

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