第25話・仲間っていいよね
——昼休み。
いつもランチに使っていた屋上は、立ち入りの張り紙がしてあった。ボコボコと、原因不明の焦げた穴がいくつもあるのだから仕方がない。
私たちは中庭に移動して、芝生の上で弁当を広げた。
ベンチや日傘付きのガーデンテーブルもあるけど、そこをキープするのは購買の“限定・塩カルビやきそばパン”以上に競争率が高い。
「中庭で食べるの久々だね」
「もう、ここって草のニオイがつくから好きじゃないのよね。明日はシート持ってこなきゃ」
と、軽く拒否反応をしめしながら、ハンカチを敷くクミコ。
「え~、あーしは好きだな、このニオイ」
逆に自然の香りが好きなレナは、『ん~~っ』と伸びをして芝生に寝転がり、緑の空気を胸いっぱいに吸い込んでいた。
それはさておき……私は二人に今朝なにがあったのかを聞いた。自分だけわからずに、ずっとモヤモヤしていたんだ。
「んで、なにがあったの?」
「アカリん、あのね……」
「学校に異世界人がいるにゃ」
「えええ⁉ マ……」
思わず大声が出てしまった私の口を、慌てて塞ぐクミコとレナ。
陽気がいいこともあって今日は人が多く、一瞬とはいえ大勢の注目を集めてしまった。
(……マジなの?)
(大マジやで、ワイも思わず声がでそうになったわ)
……おいもさんでもそんな反応をしてしまうほどなのか。
(あーしが感じたのは、渋谷の交差点みたいにザワザワした感覚にゃ)
(そんなに大勢いたの……)
(ただ
なんかまた厄介そうな相手ね……。
(でもさ、無関係の人がそんなに大勢入ってきたら、騒ぎになるでしょ)
(無関係やったら、まあ、そうなるやろな。)
(……って、ああ、そうか!)
クミコは朝礼の時、転校生や臨時教師のことを聞いた。
(だから『転校生』って質問したのか)
(まあね)
(言ってくれればいいのに……)
(だって、アカリん魔力感知できないじゃん?)
(あーしもクミコも、アカリのストレスになると思ったから言わなかったのにゃ)
(ま、そういうこっちゃ。知らん方がええこともあるんやで)
言っていることはわかる。わかるけど。それはわかるけど~。
うう……なんか
(パパさんにお守り貰っておいてよかったにゃ~)
(そやな。ただ、特定はされてへんやろうけど、クラスに魔力持ちがいるってバレてると思った方がええで)
この地域で強い魔力持ちはタケルのみだから、うちの教師や生徒に乗り移っている可能性はまずないとクミコは分析していた。
でも、転校生でも臨時教員でもないってことは……異世界人はどうやって学校に入り込んでいるんだろう?
(あ……タケルにも注意するように伝えなきゃ)
(もしタケちーの方でも異変があるようなら、ウチは体調不良で早引けするね)
さすがクミコ、ゆるぎない推し活!
(でも、なんで学校に乗り込んできたんだろ)
(
そもそも、私とおいもさんが学校にいるのはバレているのだから、『学校を探る理由がない』ってのが私たちの考えだ。
(放課後になったら、ちょっと調べてみようか)
♢
そして、寝ている間に午後の授業は流れ去り……
「ええか。魔力を感じても接触は厳禁や」
「なんとなく“あの人?”って程度の判断だけして、あとは情報共有ね」
魔力は学校中に散らばって点在しているらしい。
教師や生徒を除外しても、用務員や修理業者、それから備品や設備の修理業者などなど疑うべきは沢山いる。
私はおいもさんと一階~三階まで。クミコは体育館と倉庫周辺、レナは理科室や家庭科室がある別館が担当だ。
各々、魔力強化したアイテムを持って警戒しながら調査にあたる。私は前回の反省から、グローブを購入して強化しておいた。
格闘ゲームとかでよく見る、オープンフィンガーグローブだ。ビビッドな赤色が、意外と制服にも合っていてカッコイイ。
「……んじゃ、行きますか」
――そして30分後。
私たちは校門脇の花壇に集合した。ここなら見通しもよく、異世界人が近づいたらすぐにわかる。
「ウチの方は全然ダメ。みんなは?」
「ワイもまったくやで」
「あーしも全然。魔力は感じるのになんでにゃ……」
教室内に魔力を感じても誰もいなかったり、なにもない渡り廊下に魔力があったりと反応がめちゃくちゃだった。
感知には引っ掛かるからどこかに潜んでいると思うのだけれど、誰一人として姿を発見することができなかった。
「って、アカリん。なんでガッツポーズしてんのよ」
「あ、いや特に意味はなくて……」
なぜだろう、昼間の疎外感が嘘のように
「そっかー、残念。みんな見つけられなかったかー」
「だからなんで嬉しそうなのよ」
「えへへ……」
……仲間っていいよね、うん。
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