第12話・忘れているみたいだけどさ
「それで、ギャル子はなにを
「これなんだけど」
夕食のあと、私の部屋に場所を移して作戦会議に入ると、クミコは袋から取り出した箱をテーブルの上に置いた。
「エアガンかいな、顔に似合わず物騒なもんを選びおって」
「コルト・ディフェンダーって言うんだって。銃なんてよくわからないけどさ、名前が気に入ってこれにした。タケちーを守るのにピッタリな名前でしょ」
それは映画とかで見るものよりも、大分小さい銃だった。守りにのみ使う予定だから、普段は隠し持てるサイズがよいと考えたらしい。
「PPSでもM&P9でもデリンジャーでもなくて、ディフェンダーを選ぶ辺りセンスあるで」
おいもさんが珍しくクミコを褒めてる……。ま、なにをいっているか意味わからないけど。
「で、これに魔力を込めればええんか?」
「調べたんだけど、それだと完全に法律に抵触しちゃうんだよね」
違法性がないかをキッチリ調べておくところがクミコらしい。
「簡単にいうと、弾を発射する時の速さに制限があって、銃を強化するとそこに引っ掛かかるのよ。バレたら逮捕案件」
「ならばどうすんのや?」
「だからこれ!」
と、テーブルの上にCDケースくらいの袋を“ジャラッ”と置いた。
「ちょ、おま、ギャル子。まさかBB弾全部に魔力込めろ言うんか?」
「なんだわかってんじゃん。とりあえず一番重い0.45グラムってのを買ってきたからよろしく」
「500発入りって書いてあるやないか……石使い荒すぎるやろ。鬼か、鬼ギャル子か!」
「これならエアガン自体はそのままだから法律に触れないし、威力のある弾を撃ちだしても反動がないはず。姉子があれだけの威力の球を投げても、腕に負担がなかったでしょ?」
「あ~、言われてみれば。おいもちゃん、あーしの球も50球くらい頼むにゃよ」
合計550発。それだけあれば防衛には十分だと思う。しかし……
「ちょまち!」
「どしたのアカリん」
「忘れているみたいだけどさ、おいもさんの魔力を込める作業って、結局私がやってんだけど」
「しゃーないがな。ワイは石やで? 手がないんやで? それに魔力は常に嬢ちゃんに流れてんのやから、ワイの代わりに作業するのは当たり前やないか」
私の手から魔力をだすイメージで物体に触ると、おいもさんの魔力が付与される。
それによって衣服や球の強化ができているのだけれど、これがまたかなり疲れるのだ。ソフトボールひとつに魔力を込めるだけでも、す~っと体力が抜けて軽いめまいを起こしてしまうほどに。
「マジか~……」
その時、私たちのスマホから、メッセージアプリの着信音が一斉に鳴りだした。
「え~と」
「明日からしばらくのあいだ、休校になります。だって」
連続爆破事件の調査の為に、この地域の学校はひとまず一週間の自宅学習ということらしい。
「僕の中学も休校みたい」
と、皿洗いの手伝いを終えたタケルが部屋に入ってきた。普段から家族ぐるみの付き合いなだけに、お互いの家の台所にはなんの抵抗もなく入っていた。
「タケルも散々だったよね。まったくあの魔術師ってば余計なことしてくれちゃって」
「でもさアカリん。これはむしろラッキーなんじゃない?」
「だにゃ。休み利用してみんなで探しにいけるし、こういうのは手分けした方がいいっしょ」
「それ、もちろん僕も行くからね」
本来無関係のはずなのに、死体探しする気満々の三人。うかつにもウルっときてしまった。
「よかったで〜。これで魔力込め作業しないですむわ」
魔力武器作りは、私とおいもさんが死体探しでいないあいだ、タケルを守る為のものだ。だから全員で行動するのなら不要になる……はずだった。
「はあ? なにいってんだよ、おいも」
「甘いにゃ、おいもちゃん」
クミコとレナは見事にハモった声で念を押した。
「「——それはそれ、これはこれ!」」
「そんな甘いこと言ってたらタケちーを守れないって」
「気合入れるにゃ!」
……いや、だから私が作業するんだってば。
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