冷蔵庫

 ふと目が覚めてスマホを開く。時刻は深夜2時。どうにも眠れる気がしない。

 のそりと起き上がる。やけに冴えた頭で喉が渇いたことに気付く。

 冷蔵庫を開くと、中には数本の缶ビールと大きなお茶のペットボトルが2本。余った肉も大量にある。

 寝起きで食欲はないが、アルコールが入れば少しは瞼が落ちてくるかもしれない。

 取り出した缶ビールのプルタブを開くと、パシュッと小気味良い音が響いた。

 味も何も分からないまま飲んでいると、段々と感覚が鈍くなっていくのが分かる。

 壁掛け時計は2時15分を指し示している。時計の進みが遅い。

 カレンダーアプリを開いて予定を確認する。

 そういえば10時から客先だ。アルコールはまずかったかもしれないが、今更気にしてもしょうがない。

 いっそ開き直ろうと2缶目を開ける。

 冷蔵庫から取り出した肉を適当に炒めると、深夜には堪らない匂いが漂い始めた。

 この香りだけで飲み切れそうだ。

 塩胡椒を振りかけ、フライパンから直接つまむ。思わずビールで流し込むと、汚くも気持ちの良いゲップが出た。こんなとこ、他人には見せられない。

 気付けば2缶目も空っぽだ。

 3缶目を取り出そうと冷蔵庫のドアに手をかけたところで、何故だか扉がとても重たくなった。

 悪くない。どうやら睡魔が襲ってきているらしい。

 そのまま口を濯いでベッドに潜り込むと、すぐに瞼が開かなくなった。

 やっと寝れると思ったのも束の間、けたたましい音が鳴り響く。

 あぁ、クソ。どうしてこうも目覚まし時計のアラームは融通がきかないのか。きいたらきいたで困るのだが。

 止めたその手で目覚まし時計を掴み、時刻を読む。

 単針は10を指していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る