中華まん

「なんで寒いとまんモノ食べたくなるんだろね」

 コンビニで買った肉まん、はむりと食らいつきながら田中が言う。食べたくなる気持ちは大いに理解できるし、なんなら一緒に買った。けど、まんモノって呼び方は何か違う気がする。

「一番は肉まんだしょ?」

 人差し指をこちらに向けてくる。

「異論はない」

「じゃあ2位は?」

 そう言われると難しい。いざ二番目と言われると、これまであまり考えたことも無かった。あんまん、ピザまん、カレーまん……あと何かあったっけ?

「選択肢あんまないね」

 田中も気づいたらしく、立ててた人差し指がへにょりと折れる。

 調べてみようと思い、そういえば何と検索すればいいか分からないことに気付く。「まんモノ」で調べれば出てくるだろうか。

 スマホのブラウザで叩いてみると、意外にも目当てのものがちらほら出てくる。なるほど、中華まんで調べれば良かったのか。

「あ、さつまいもまんだって! おいしそー!」

 横から覗き込んできた田中がはしゃぐように声を上げる。

「どこに売ってんだろね?」

「ローソンとか、ミニストップて書いてるな」

 どっちもこの辺にはないコンビニだ。そもそもミニストップって日本にまだあんの?

「駅のほう行けばローソンあったよね。でも遠いなぁ」

 あっ、と前を歩く田中が何かを思いついたように振り返る。

「日曜、どうせ暇でしょ? デートしよデート」

 確かに暇だけど、決めつけないでほしい。

「こんなに可愛い女の子隣に侍らせて歩けるんだ。絶対楽しいぞぉ〜」

 そう言われなければ楽しみにしていた。だけどまあ、デートと言われるとなんだかソワソワしてしまう。

「じゃ、日曜よろしくね! 私の分のさつまいもまんのお金、忘れんなよー」

 分かれ道、そう言ってさっさと自分の家の方に向けて帰る田中を見送る。

 たかる気満々じゃないか。

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