第26話 秘密の関係ってのは予想外のところでバレるもの

 夏休みになった。


 結局、詩音と付き合っていることはなんとか秘密にしたままに学校が終わってしまったな。


 ま、バレても良いものだし、別にそこまで深くは考えていなかったが。


「おつかれー、陽くん」


 少し時間をずらして正門のところで待ち合わせ。


 誰もいないのを確認しながら肩を並べて歩き出す。


 2つ目の角を曲がったら手を繋いでルールなので、互いに手を出して手を繋いだ。


 詩音の温もりを感じると口元がニヤケてしまう。それは詩音も同じみたいで口元がニヤケていた。


 それを見ながらお互いに笑い合ったあとちょっとの沈黙。なにか話さないといけないと思い口を開く。


「「あの」」


 考えていることが同じだったのか、全く同じタイミングで声が重なり互いにはにかむ。


「し、詩音からどうぞ」


「えっと、それじゃ、あの……陽くんに大事な話があって……」


「大事な話?」


 ちょっと怖いワードに怯えていると、詩音が名残惜しそうに手を離す。


 スクールバックの中から先程いただいた通知表を取り出した。


「これを見てください」


 ゴクリ。


 一体なんなのかわからないままに通知表を覗き見る。


「……」


「……」


「あの、これがどうかしたのか?」


 至って普通の成績表に見えるのだが、どうして詩音はこれを見せてきたのか、これがわからない。


「えへへ。実は成績が上がったのです☆」


 ぶいっと夏の青空の下、美少女が爽やかなピースサインを見せてくる。


「これで?」


「あ、ひっどーい。めちゃくちゃ上がったんだからね」


 以前はどれほどのものだったのか気になるが、本人が上がったと言っているのだから追及はするのはやめておこう。


「そういえば夏休みに勉強合宿ってのがあるみたいだよ」


「あー、そういえば去年もあったな。俺は行ってないけど」


「私もお金がないから去年は行けなかったな」


 言いながらチラリとこちらを見てくる。


「でも今年はバイトも始められたし、それに……」


 ギュッと手を握ってくれる。


「初カレもできたし、一緒に行きたいな」


 そう言ったあとに、思いとどまるような顔をする。


「ご、ごめんなさい。陽くんも大学進学のためにお金を貯めているんだもんね。わがまま言ってごめんなさい」


 そんなことを言われて断るなんてことをしたら男が廃るってもんだ。


「せっかく初カノが誘ってくれているんだ。それに、俺だって詩音と合宿に行きたいって思うからさ、一緒に行こう」


 そう言うと、嬉しそうな顔をしてくれた。


「うん♪」


「その勉強合宿の応募期限とかってあんの?」


「えっとね、確か夏休みにも募集かけてた気がする……」


 そう言うと、言葉を止めて酷く焦った顔になった。


「今日の午前中までみたい」


「なんだって!?」


「あ、あ、どうしよう。もうお昼になっちゃう」


「誰に言えば良いんだ!?」


「担任の先生で良いみたい」


「だったらダッシュで戻れば間に合う。走るぞ詩音」


「はい!」


 運動神経良いカップルの俺達はダッシュで学校に戻り、担任の犬川先生のいる職員室へ向かった。


 結果としては勉強合宿の応募に間に合ったんだけど、手を繋いで戻ったため、俺達が付き合っているのは犬川先生にバレてしまったとさ。

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こちらを無意識に尊死させようとしてくる東都詩音 すずと @suzuto777

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